スタジオ便り

スタジオから日々のあれこれお届けします

感覚過敏とデフォルトモード

発達に特性のある子たちは「感覚」にも特性を持っている場合があります。


発達に特性のある子たちは、定型発達とされる人たちが何とも思わない感触や音などに対して、ストレスを感じてしまうことがあります。

こういったことを「感覚過敏」と言ったりします。


感覚過敏がなぜ起こるのか、はっきりしたことは研究段階であり、わかっていないことが多いそうです。

ただし、傾向として言えることは、感覚過敏が出やすい状況と出にくい状況があるということです。


感覚過敏が出やすい状況は、脳が「デフォルトモード」にある時だと言われています。


デフォルトモードとは、行動に社会的な意味を持たない状態のことです。

集中力や実行力が低い状況で、頭がぼんやりとしている時です。

特に意味の無い行動をしている時、慣れた動作をしている時がデフォルトモードになりやすいです。


決してデフォルトモードは悪いものではありません。

空想の時間であったり、アイディアが閃く時間でもあります。


アルキメデスの原理で有名なアルキメデス。

原理を発見したのはお風呂に入ってぼんやりとしているときでした。

おそらくデフォルトモードだったと考えられています。

「ユーリカ!(わかったぞ!)」と叫んでお風呂を飛び出したのは有名な話です。


私たちも通勤通学でぼんやり歩いている時に思わぬアイディアが浮かんだりします。

このように、人類の発明や個人のひらめきはある程度デフォルトモードに支えられています。


一方、行動に社会的な意味があって集中力や実行力の高い状態を「タスクモード」と言います。

遊んでいる時、スポーツをしている時、お仕事をしている時などです。

タスクモード時は感覚過敏が出にくいと言われています。

脳が使える資源には限りがあります。

目の前のタスクに資源を割いているから感覚過敏が出にくいのでは?と考えられます。


人間は1日の中でデフォルトモードとタスクモードを切り替えながら生活しています。

ところがデフォルトモードの時間があまりに長いと、行動に社会的な意味がない時間も多くなり、感覚過敏が出る機会も多くなりやすいということになります。


また、脳の機能はタスクモード時の方が発達すると考えられています。

スパーク運動療育では、遊びを通してタスクモードの時間を作り、脳の発達を促しています。

発達していくと、タスクモードとデフォルトモードの切り替えがうまくいくようになっていくとも考えられています。


子どもたちの「やりたい!」「楽しい!」という感情からタスクモードへの切り替えを促します。



共感的関わりでストレスの緩和

スパーク運動療育では子どもたちへの共動・共感を大切にしています。

共感をする理由の一つがストレスを軽減するためです。


発達に特性のある子どもたちは、日常生活において様々なストレスを受けやすい状況にあります。


・表現する方法や反応の違いがあって周囲に理解してもらいにくいストレス

・感覚過敏やアレルギー、身体疾患などのストレス

・園や学校での課題と能力のギャップで生まれるストレス など


特に周囲に理解してもらえないストレスは問題行動として表れることもあります。


ストレスを感じることは精神的にも肉体的にも膨大なエネルギーを使います。

ストレスは様々な疾患、精神疾患の原因となります。

それくらい人間にとって深刻なのがストレスです。


ストレスが強い状態で、自分の気持ちや行動を調整することは発達特性の有無にかかわらず非常に難しいことです。


そこで、スパーク運動療育ではまず共感することでストレスを下げることを大切にしています。

子どもが発した気持ちや言葉、行動に寄り添い、認めることで共感的な関わりをしています。

一見意味のなさそうな何気ない仕草も、療育士達は拾い上げて共感します。


共感はストレスを下げるだけでなく、「じぶんを理解してもらえた」ということで自己肯定感を高めることにもつながります。

自己肯定感は自分の価値をポジティブに認めることが出来る気持ちのことです。

自己肯定感はチャレンジの原動力になります。


このように、まず共感をすることで心を良い状態にします。

そのうえで遊びを通じ様々なやり取りをしていくことで子どもたちの感情を育んでいきます。

ストレスが低い状態であれば、自分の気持ちを整理することや行動を調整することもしやすくなります。


自閉症スペクトラムと脳の特性

自閉症スペクトラムと言われる子たちは先天的な脳の特性があると言われています。


1つは形質的な違い

もう1つは機能的な違いです。


自閉症スペクトラムのある子たちの脳は「視覚野」につながる脳神経の回線が多いと言われています。

そのため、視覚的な記憶に優れていたり、「物」への興味を持ちやすかったりするそうです。

他にも、左側の側脳室と呼ばれる脳の空間が大きく、頭頂葉が圧迫されることでワーキングメモリが妨害されているという事例も報告されています。

ワーキングメモリが妨害されると、同時に複数の作業や運動をこなすことが苦手になりやすいです。


機能的な特性についても少しずつわかってきたことがあります。

定型発達とされる人たちと比較して、自閉症スペクトラムの人たちは内側前頭前野、後部帯状回といった「社会脳」をつかさどる部分の機能的つながりが弱いということがMRI画像で示唆されました。

これら「社会脳」と言われる脳領域は、自己内省や他者の気持ちを推測するときに使われるとされています。


こういった脳の形質的、機能的な特性は必ずしも悪いものではありません。

ですが現代社会で生きていくときに、苦労や不安があるのは事実です。


そこで必要になるのが療育です。

脳には可塑性(変化する性質)があります。

脳は使うことで変化します。

たとえ先天的な回線が変わらなくても、繰り返し刺激を与えて使うことで迂回路が出来ます。


スパーク運動療育では遊びを通じてたくさん体を動かし、人と関わることで脳をたくさん使います。

特に自閉症スペクトラムの子どもたちにはスパークのような積極的な関わりは効果的です。

その中で少しずつ脳は発達していきます。


少し難しいことを書きましたが、療育での取り組みは明快です。


・遊びの中で体を動かし、人と関わること

・子どもに共感し、ストレスを緩和することで社会脳が発達しやすい状況を作ること

(→ストレスは心身共に膨大なエネルギーを消耗するため)


それを追求したのがスパーク運動療育で提供している「豊かな遊び場」です。

脳科学的なことを踏まえたアプローチは、最終的に子どもの基本である「遊び」に帰結します。


【参考文献】

・Minyoung Jung et al: Default mode network in young male adults with autism spectrum disorder: relationship with autism spectrum traits. Molecular Autism 2014.

子どもたちの衝動的な行動や問題行動の捉え方

子どもたちは、衝動的な行動、問題行動と呼ばれる行動を起こすことがあります。

問題行動は社会的規範などに照らし合わせた時に好ましくない行動を指します。

かつては「問題行動を起こす困った子だ」という認識でしたが、スパークではそのような捉え方をしていません。


問題行動を起こしたくて起こしているのではなく、感情や考えが理解されないストレスとして行動に表れることがあると捉えています。

特に先天的に特性を持っている子どもたちは、そうでない子どもたちとは自身を表現する方法が違ったり、身体的な特徴があったり(感覚過敏等)、与えられる課題と自分の能力のギャップが大きかったりします。

すると様々な面で大きなストレスを受けることになります。

慢性的にストレスや不安を感じることで、衝動的な行動や問題行動といったものが出やすくなってしまいます。


スパークでは遊びを通じて感情を発達させ、情動や行動を自己調整(セルフレギュレーション)できるようアプローチをしています。

子どもたちが遊びの中で表現する動きや表現に共動・共感すること(感情や感覚を共有すること)を第一にしています。

一緒にその遊びや動きをする、褒める、そこからやり取りを広げていくという関わり方をしています。

この関わりを続ける中で子どもたちのストレスの緩和、自己肯定感の高まり、感情の発達を促します。


そして最終的に情動や行動を自己調整する力がついていくことを目指しています。


最近の子たちは”さんま”が減っている?!(秋刀魚じゃなくて三間です)

現代の子たちは一昔前の子たちと比べると、「さんま」が減っていると言われています。

秋刀魚ではありません。


「三間(さんま)」です。

(造語です。)


秋刀魚の漁獲量が減っていることも問題ですが、子どもにとっては三間(さんま)の減少も深刻です。


三間は子どもの遊びに必要な、「空間」・「時間」・「仲間」の3つの「間」のことを言います。

「遊びのさんま」が満たされた環境でたくさん遊ぶことで子どもたちは発達していきます。


ところが、一昔前のような自由に思いっきり遊べる「空間」が減っています。

公園は数が減るし、空き地やガレージで遊ぶと今は厳しく怒られます。

公園があっても、いつの間にかボール遊びが禁止になっていたりして、激しく遊べなくなっています。


時間の減少も進んでいます。

最近の子たちは多忙です。

園や学校が終わると毎日のように習い事がある子たも少なくありません。

もちろんスポーツや芸術を習うことは、身体機能を向上させ、豊かな感性育むことに大きく貢献します。

しかし、ある程度形式が決まった中で先生に教えてもらう「習い事」と、子ども同士が自由に展開する「遊び」では本質的に異なります。

どちらが優れているとかではなく、どちらも大切です。


たとえ子ども自身が習い事をしていなくても、保護者が家事や仕事で忙しければ時間は減ります。

共働きの家庭も多くなってきているため、仕方ない部分も大きいです。


たとえ時間と空間があっても、「仲間」がいなければ「遊びのさんま」を満たすことはできません。

出生数が年々減少傾向にある日本ですので、子どもの絶対数が減っていることは言うまでもありません。

2019年はついに年間90万人を割ってしまい、過去最少となったそうです。


ここまではすべての子どもたちに共通して言えることです。

では特性のある子たちはどうでしょうか。


特性のある子たちの中にはコミュニケーションに不安があったり、他の子たちと比べてできないことが多かったり、発達のスピードが違ったりします。

すると、子ども同士の輪に入ることが難しくなることがあります。

これでは時間と空間が整っていたとしても「仲間」の条件が満たされていないのと同じです。

同じ時間と空間にいても、独りになりがちです。


子どもは遊びを通じて発達します。

子ども同士で遊ぶ中で生まれる様々なやり取り、感情、運動、イメージなどはすべて発達に必要な刺激です。

ところが、特性があって「仲間」に入りたくても入れない状況では、こういった刺激に触れる機会が少なくなりがちです。


スパーク運動療育西京極スタジオでは、思いっきり体を動かせる「空間」と「時間」があります。

(さすがに公園ほどではありませんし1時間だけですが)

その中で、「仲間」である療育士とたくさん遊び、社会性や感情、運動機能等の発達を促します。

また、スタジオで療育士と遊ぶことは将来的に実際の子ども同士で作られる「仲間」に入って行くための練習にもなります。


アスペルガーという名前の由来

自閉症スペクトラムの1つ、アスペルガー症候群は、1900年代中ごろにオーストリアで小児科医をしていたハンス・アスペルガー先生の名前から来ています。


現代においてアスペルガーと診断される特性を、世界で初めて詳細に記録、報告したのがアスペルガー先生です。

アスペルガー先生は第一次・二次世界大戦で世界が混沌とする中、そういった特性を持った子たちに対して療育を行っていました。


療育の内容は、当時ではとても先見の明のある内容でした。

それは、身体を沢山動かして遊ぶこと、音楽を楽しむこと、子どもたち一人一人の興味に寄り添って伸ばしてあげることでした。

この療育のスタンスはスパークを含め、現代の療育では主流になりつつありますが、当時ではなかなか思いつかなかった内容でした。

それから数十年、医療現場では自閉症やアスペルガーと呼ばれるような子たちを施設に送り込んで隔離してしまったり、現在では過酷で効果の無いとされている療法を行ってしまいます。


いつの時代も子どもにとっては思いっきり楽しく遊ぶこと、そしてその中で社会性を育み、できることを少しずつ増やしていくことが大切です。

ですが、豊かな遊び場(*)や遊ぶ機会自体が減っていることが現状としてあります。

(*思いっきり体を動かせること、こども同士で自由に遊べることなど)


遊ぶ場はあっても特性のせいでうまく輪に入っていけないこともあります。

スパーク西京極では豊かな遊び場を提供するとともに、療育士がサポートをしながら社会性や運動機能等の発達などを促していきます。


<参考書籍>
自閉症の世界 多様性に満ちた内面の世界 スティーブ・シルバーマン著 正高信男・入口真夕子翻訳 ブルーバックス 2017年


スタジオでの遊び⑤:ラフタンプレイ

スタジオでの遊び紹介も、もう5回目になりました。

今回はラフタンプレイです。


「ラフタンプレイ」と改めて言うと、多くの方がピンとこないと思います。

簡単に言うと、じゃれつき遊びとか、体遊びの類です。


たとえば

・こちょこちょ こしょばし

・抱っこでぐるぐる回す

・手遊び歌

・ふれあい遊び


などなど、ご家庭でもやったことがあると思います。


ではなぜ療育でラフタンプレイをするかを説明していきます。


①他者を意識するため

まず一つは遊んでいる他者を意識するためです。

「手」や「足」と遊んでいるのではなく、「人」と遊んでいることをしっかり意識してもらうため、何度も何度も繰り返します。

その日すぐに効果が出るわけではありませんが、継続して通所していただいているお子様の中には療育士を意識することが出来るようになってきた方もいます。


②ボディーイメージの形成

発達特性のある子たちの中にはボディーイメージの弱い子たちがいます。

ボディーイメージが弱いと、自分の体がどれくらいの大きさで、どのように動いているかというのが認識しにくいです。

そのため、よく物や人にぶつかりやすいという現象が起こります。


ボディーイメージの形成に必要な感覚は主に3つ。

平衡感覚、固有感覚、触覚です。

ラフタンプレイでは、他者に触れる、触られる、包まれる、ということを通じて触覚に働きかけボディーイメージの形成に寄与しています。


③オキシトシンの分泌

愛情ホルモン、絆ホルモンと呼ばれるオキシトシン。

主にハグをすることで分泌されるということが分かっています。

ラフタンプレイはハグに極めて近い遊びなので、同様の効果を期待しています。


オキシトシンはリラックス、ストレスの緩和、人への共感や信頼感が増すなど、様々な効果があるということが分かってきています。

療育を行う上で、療育士との信頼関係は非常に大切です。

他にも、スパーク西京極では「ストレス無く、リラックスして思いっきり楽しく遊べる!」という気持ちを大切にしています。

これらが整ってからでないと、療育で脳へ良い刺激を入れることはできないと考えています。


そして、スパークでは重要な位置づけにある「他者との共感」にも、オキシトシンは一役買ってくれます。

ラフタンプレイ以外の時にも、何かできた時はハグをしてたくさん褒めます。

この時もオキシトシンの効果、加えてドーパミンの効果が期待できます。


ぜひご家庭でもたくさんハグしてあげて下さい!


遊び場(療育)をシェアすることで生まれる現象・効果

スパーク西京極では1時間に3名のお子様まで同時に療育が可能です。

多くの場合は2名が大きな部屋でシェア療育、1名が小さな部屋で個別療育を行います。

お子様一人につき療育士は必ず一人以上担当します。


部屋の間にある扉は、締め切ったり、開けっ放しにしたりします。

開けっ放しにしている時であれば3名、締め切っている時でも2名で遊び場をシェアすることになります。


スパークでは公園のようなイメージで遊び場を提供しています。

子どもそれぞれが療育士と自由に遊ぶ中で別の子の遊びへ興味を持ち、自由に参加していくことが可能です。

実際にそういったシーンも増えてきています。

その時に生まれるやり取りを上手にできなくてもかまいません。

療育士がサポートするので、どんどん関わっていってもらえればと思います。


遊びに加わるだけでなく、おもちゃを取り合うようなシーンも見受けられますが、これは決してネガティブなことではありません。

お子様が他者と関わり、社会性を育むチャンスでもあります。

療育士が一人ずつついていますので、気持ちを代弁したり、味方になったりしてお子様同士の関わり合いをサポートいたします。

その中で少しずつ社会性やセルフコントロールが育まれていきます。


何か遊びをしているときに、別の子がしている遊びに気を取られて注意が逸れてしまうことがあります。

「集中力が切れてしまった」とネガティブに捉えることもできますが、「他者のしていることへ興味を持った」というふうにポジティブに捉えることもできます。

これは社会性を育むうえで重要なことであり、遊び場をシェアするからこそ生まれる現象です。


個別療育でありながらも、その場に別の子も一人か二人いるという環境だからこそできること、生まれる効果があります。


【レビュー論文を紹介】運動がADHDの子の認知機能や特性に与える効果について科学的にわかってきた?

ADHDの子に対する運動の効果が科学的に証明されつつあります。

今回は2019年の現段階で科学的に分かっていることについてまとめられたこちらのレビュー論文の内容を紹介します。



新しい情報は何かと英語で、なかなか得ることが出来ません。

でも、せっかくスパーク西京極のブログを読んでいただいている皆さんには知ってもらいたいなと思ったので、大事になるポイントを日本語で簡単にまとめてご紹介します。


【大まかな内容】

・ADHDの子が運動をするとどんなメリットがあるのか?

・脳が発達するメカニズムは?

・どんな運動をすればいいのか?

・科学的に推奨される運動の内容は?


スタジオでの取り組みを交えながら、ご紹介します。


ADHDの子が運動をするとどんなメリットがあるのか?

そもそも特性の有無に関係無く運動をするだけで、生理学的、心理学的、認知神経科学的な好影響がたくさんあります。

 

・ストレス、不安、うつ状態などネガティブな感情の緩和

・実行機能や記憶力の向上を含む認知機能面に対するポジティブな効果→脳機能へ効果

・一過性の運動では脳波の状態が改善&脳に回る酸素の量が上昇する→脳が覚醒し頭が冴える

・脳由来神経栄養因子:BDNFが大脳皮質や海馬で増加→脳の発達

・灰白質、白質といった脳の神経組織の発達を促進

これら全て科学的に証明が進みつつあります。

もちろん科学は全てを説明しませんし、諸説ある状態は続きますが、運動にこういった効果がある事はほぼ間違いないとされてきています。


ADHD特性を持った子に対する運動効果は、まだ「断言」する域には達していませんが、研究は進み、たくさんのことが分かってきています。

先に紹介した生理学的、心理学的、認知神経科学的な効果はADHDの子たちが持つ特性傾向にも関係しており、好影響を与えます。

 

特に認知機能の中でも重要な役割を果たす実行機能を運動は改善します。

実行機能は課題を遂行するにあたって思考や行動をコントロールするシステムのことです。

 

(*注:実行機能にはワーキングメモリ、注意のコントロール、抑制のコントロール、認知のコントロール、認知の柔軟性などが含まれます。私たちは普段何気ない行動でも、こういったことを瞬時に処理して生活しています。ところがADH傾向のある人の場合、これらの機能を使うことが少々苦手であると言われています。)

 

運動による実行機能の発達と、運動から得られるその他様々なメリットが合わさることで、衝動性、注意欠陥、多動といった特性を自分で調整することに対して効果があると科学的に証明され始めています。

 

ではどうして運動は効果があるのか。

そして、どれくらい運動すれば良いのでしょうか。


一過性の運動でも効果はあり

一過性の運動(例えばスパークに1回来る)でも一定の効果が認められています。

特性の有無に関わらず、運動をした後は実行機能を推察するテストの結果が良くなる傾向にあるということが分かっています。

 

これは一度の運動で脳が劇的に発達したからではなく、先ほど紹介したネガティブな感情の緩和や脳波の状態、脳の酸素状態が良くなること等に由来していると考えられています。

つまり、実行機能はADHの特性と関係していると言われているので、運動をすることで、一時的に特性の自己調整がしやすくなる可能性があります。

 

確かにスパークで療育をしている最中は問題行動が減ったり、普段できない事ができたりするというシーンを時折見かけます。


ただし、こういった一過性の運動による効果はその時だけのもので、しばらく時間が経てばもとに戻るとされています。

 

では意味が無いのでは?と思われるかもしれませんが、そうではありません。

この一過性の効果でも、何度も何度も蓄積することで良い影響が期待できます。
その証拠に、継続して長期間運動をした場合の方が、一過性の運動よりも大きな効果が科学的に認められています。


継続して運動したほうが効果は高い!

一過性の運動より、長期的に運動を継続した方がADHDの子に対しても、定型発達の子に対しても実行機能や特性に大きな効果が出やすいということが分かっています。

 ではどういった運動を継続していけば良いのでしょうか?



有酸素運動は効果的だった!?

一番ではありませんが、最も手ごろで、科学的にも効果が認められているのは有酸素運動です

まだまだ研究段階ではありますが、様々なことが分かってきています。、

心肺機能の高いADHD児の方が、そうでないADHD児よりも抑制制御機能を測るテストスコアが高いようです。

他にも、被験者数が少ないですが、身体活動量と実行機能のテスト結果に相関関係があるというデータもあります。

有酸素運動が良い!!と言っても無理にマラソンなどをさせる必要はありません。

たくさん走り回れるような遊び、

登山や川など自然と心肺機能を鍛えることができる遊び、

できるだけ楽しく息が弾むような遊びに連れ出してあげることが大切です。

それで有酸素運動になります。

 

運動の強度(激しさ)は軽く息が弾む程度で構いません。

アスリートほど心拍数を高めた過酷な運動じゃなくて大丈夫です。

ウォーキングからジョギング程度の強度で効果は認められています。

 

スパーク西京極に来て下さった時に療育士たちとキャーキャー言いながら楽しく遊んでいます。

あの時の運動レベルで科学的にもOKなんです。

そして、キャーキャー楽しく遊んでいる、それだけでも脳に大きな効果が期待できると科学的裏付けがされ始めているのです。



他にはどんな運動が良い?

有酸素運動以外でも運動の効果は認められています。

最も効果が高いのは、様々な運動に長期間取り組んだ場合です。

「子どもが様々な運動に取り組む」、これぞまさに「自由な遊び」の出番であり、遊びがいかに重要かを物語っています。

特定の運動ばかりを無理矢理させる環境では、様々な運動に触れることはできません。

遊びという自由さがあるからこそ、子ども自身が自ら進んで、楽しく、様々な運動に取り組めるのです。

 

ちなみに、有酸素運動よりも、コーディネーションを必要とする運動(投げたり蹴ったり登ったり)、スポーツ活動などの方が実行機能向上への効果が大きいという研究もあります。

もちろん、スパーク西京極では遊びを通じてこういったコーディネーションを必要とする運動なども行っています。



最も良くないのは、非活動的な習慣を送っている場合かもしれません。

そもそも定型発達児よりもADHD児の方が身体活動量の推奨レベルを満たしていない可能性が高いようです。

そうなると認知機能や特性による困難さに加えて、肥満や生活習慣病のリスクまで高めてしまいます。


何分くらい、どれくらいの激しさで運動をする?

それではこういった運動(遊び)はどれくらい行えばよいのでしょうか。

まず時間ですが、1回あたり10分以下の運動では効果が出にくく、11分以上からがターニングポイントになるようです。

数々の研究をメタ分析した結果では20~30分の運動で効果が出る可能性があるとされています。

 

ですから療育では最低でも15~20分はたくさん動き回る遊びをしたいなと考えています。

(☆もちろん強制はしませんし、それ以上の時間も大歓迎です。

90分の運動を5週間続けたら大きな効果が出たという研究もあります。)

 

スパーク西京極での療育は1回あたり60分ですので時間は十分にあります。

脳のコンディションを良くする意味も込めると、できるだけ序盤に走り回ったりできるとベストです。


次に運動(遊び)の強度です。

低~中強度=最大心拍数(脈拍)の40~75%で効果が認められています。

スパーク西京極に来てくれる未就学児(5歳)であれば、1分間に86拍~161拍程度です。

ちょっと走り回ったり、何回もジャンプしたりするだけで十分に到達できる範囲です。

 

もちろんもっと高い強度でも効果はありますが、継続できなくては意味がありません。

 

効果が出始める継続期間ですが、こればかりは個人差が最も大きいのではないでしょうか。

それを踏まえた上で言うと、最短でも5~10週間はかかります。

効果の大きさも、大きなものか小さなものか、これも個人差が大きく、断言できるものではありません。

 

それでも根気よく運動(遊び)はたくさん続けていただきたく思います。

運動をすること、遊ぶことで発達に対してメリットが出る可能性は合っても、デメリットが出る可能性は極めて低いですから。


なぜ運動で脳の発達に効果が出るの? 

脳の発達に効果が出る理由についても研究が進んでいます。

まずは1回の運動をすることで脳に起こる現象からご紹介します。


脳波には数種類ありますが、集中や注意に関係するのがβ(ベータ)波、寝る時(不活動時)の脳波がΘ(シータ)波です。

運動をすることで、β派が有意になり、脳が覚醒します。

また、運動をするとリラックスを司るα波も高まると言われています。

すると、脳が覚醒しつつも(起きつつも)、リラックスした状態になります。

それと並行して血流が促進され、脳に行き渡る酸素量も増加します。

注意力やその他の実行機能を最大限に使えるコンディションができあがります。


こういった最高の状態で、遊びの中で脳を最大限使い、自己調整する、できた、という経験の繰り返しが長期的な発達に繋がります。

 

また、運動をした後には脳由来神経栄養因子:BDNFが脳の皮質、海馬で発現することが分かっています。

BDNFは脳の神経細胞を成長させる役割があります。

運動を継続し、BDNFを繰り返し発現させることで脳の発達が促されると考えられています。



長期的に運動を継続することで脳に起こる変化も科学的に証明が進んでいます。

特に前頭前野、線条体、前頭頭頂皮質、中脳皮質などのADHD児が定型発達児とは異なった発達やネットワークを見せる部位に対して効果があると分かってきました。

そういった部位の神経組織の発達を促すことが運動によって可能であると証明されてきています。

衝動性や多動、注意欠陥といった特性は必ずしも悪いものではなく、それを自分で制御する能力が求められます。

そこに対して運動が効果的であるという科学的な裏付けになります。


スパーク西京極での取り組み

今回紹介したレビュー論文はスパーク西京極での取り組みを科学的に裏付けるものになりました。

60分ある療育時間の中で、基本的には動き回るので、有酸素運動の効果が出る条件は満たしています。

他にもボールや大きなおもちゃ、自分や療育士の体を使ってコーディネーションを必要とする運動もたくさん行なっています。

 

加えて、スパークでは子ども自らが「やりたい!」と思った感情を大切にしています。

どんなに素晴らしい効果が期待される運動でも、「やりたい!」という感情、「楽しい」という感情、リラックスできる環境が無ければ脳に良い刺激は入らないと言われています。

 

スパーク西京極では、科学的に効果が証明されつつある運動に、感情へのアプローチを組み合わせた療育をしています。


<このブログ記事の参考文献&画像引用>

・Lasse Christiansen et al: Efects of Exercise on Cognitive Performance in Children and Adolescents with ADHD: Potential Mechanisms and Evidence-based Recommendations. J. Clin. Med. 2019, 8, 841.

スタジオでいつも裸足で遊んでもらう理由

スパーク西京極ではスタジオに来てもらうとすぐに、「靴下脱ごうか!」とスタッフが声をかけます。

毎度の事なので、お父さんお母さんも「靴下脱ぎや~」と真っ先に子どもに声掛けしていただくことも増えました。


では、なぜ靴下を脱いで裸足で遊ぶのか。

それは子どもの発達に必要な、ちゃんとした理由があります。

ご存知でしょうか?


子どもたちには

「滑ってこけちゃうからね~」と言っていますが、、、。


まぁ、それも理由の一つですが、もっと大切なことがあります。


足の機能と感覚のためです。


人間の骨格は本来、裸足で歩くのに最適な構造をしています。

ところが近年、裸足で活動する機会がめっきり減ってきました。

さらに、最近は靴のソールの機能が上がりすぎて足へのサポートが無駄に手厚くなってきました。


するとどうなるか。

自分の筋肉で足をフルに使うこと、地面の刺激を感じることが減ります。

それが続くと、偏平足やO脚、X脚など足回りのトラブルを生みます。

偏平足は土踏まずがつぶれて足裏が全部地面についている状態です。

衝撃吸収能力が弱くなるので、どたどた歩きが分かりやすい特徴です。

これらはすべて全身の運動機能の低下にも関係します。


とは言っても4歳くらいまではほとんどの子が偏平足です。土踏まずは6歳くらいから完成してきます。焦らずに。

でも使わないと発達していかないので、裸足で遊んでもらいます。

裸足でしっかり踏ん張る、地面をつかむことで足回りの筋肉をしっかりと使います。

靴下を履いていては足の指が自由でないため、この機能を最大限使えません。


地面の凸凹などの状況を感じる触覚が鈍いと足は上手に使えません。

なので、裸足になることでその感覚をしっかりと刺激する目的もあります。

靴下をはいている状態は靴をはいている状態よりは良いですが、布が一枚ある分、感覚は鈍くなります。


足の使い方が下手、感覚が鈍いと、膝、股関節、体幹も上手く使えず姿勢の維持にも影響が出ます。

そして姿勢ができていないのはあらゆる運動機能に影響します。


スタジオでは遊びの中で様々な物を踏んだり登ったりするので、足裏からしっかり刺激を入れ、足の指を自由にした状態で足の機能をいっぱい使ってもらいたいと思います。

週1~3回、時間にして数時間の小さなことかもしれませんが、将来的な偏平足の予防、体幹をうまく使えるようになること、運動機能の向上などにつながればと思います。


わたくしブログ担当、子どもがマットなどによじ登っているとき、足の指がパーッと開いて地面をつかんでいると「よしよし」と心の中で思っています。