スタジオから日々のあれこれお届けします
発達に特性のある子たちは「感覚」にも特性を持っている場合があります。
発達に特性のある子たちは、定型発達とされる人たちが何とも思わない感触や音などに対して、ストレスを感じてしまうことがあります。
こういったことを「感覚過敏」と言ったりします。
感覚過敏がなぜ起こるのか、はっきりしたことは研究段階であり、わかっていないことが多いそうです。
ただし、傾向として言えることは、感覚過敏が出やすい状況と出にくい状況があるということです。
感覚過敏が出やすい状況は、脳が「デフォルトモード」にある時だと言われています。
デフォルトモードとは、行動に社会的な意味を持たない状態のことです。
集中力や実行力が低い状況で、頭がぼんやりとしている時です。
特に意味の無い行動をしている時、慣れた動作をしている時がデフォルトモードになりやすいです。
決してデフォルトモードは悪いものではありません。
空想の時間であったり、アイディアが閃く時間でもあります。
アルキメデスの原理で有名なアルキメデス。
原理を発見したのはお風呂に入ってぼんやりとしているときでした。
おそらくデフォルトモードだったと考えられています。
「ユーリカ!(わかったぞ!)」と叫んでお風呂を飛び出したのは有名な話です。
私たちも通勤通学でぼんやり歩いている時に思わぬアイディアが浮かんだりします。
このように、人類の発明や個人のひらめきはある程度デフォルトモードに支えられています。
一方、行動に社会的な意味があって集中力や実行力の高い状態を「タスクモード」と言います。
遊んでいる時、スポーツをしている時、お仕事をしている時などです。
タスクモード時は感覚過敏が出にくいと言われています。
脳が使える資源には限りがあります。
目の前のタスクに資源を割いているから感覚過敏が出にくいのでは?と考えられます。
人間は1日の中でデフォルトモードとタスクモードを切り替えながら生活しています。
ところがデフォルトモードの時間があまりに長いと、行動に社会的な意味がない時間も多くなり、感覚過敏が出る機会も多くなりやすいということになります。
また、脳の機能はタスクモード時の方が発達すると考えられています。
スパーク運動療育では、遊びを通してタスクモードの時間を作り、脳の発達を促しています。
発達していくと、タスクモードとデフォルトモードの切り替えがうまくいくようになっていくとも考えられています。
子どもたちの「やりたい!」「楽しい!」という感情からタスクモードへの切り替えを促します。
スパーク運動療育では子どもたちへの共動・共感を大切にしています。
共感をする理由の一つがストレスを軽減するためです。
発達に特性のある子どもたちは、日常生活において様々なストレスを受けやすい状況にあります。
・表現する方法や反応の違いがあって周囲に理解してもらいにくいストレス
・感覚過敏やアレルギー、身体疾患などのストレス
・園や学校での課題と能力のギャップで生まれるストレス など
特に周囲に理解してもらえないストレスは問題行動として表れることもあります。
ストレスを感じることは精神的にも肉体的にも膨大なエネルギーを使います。
ストレスは様々な疾患、精神疾患の原因となります。
それくらい人間にとって深刻なのがストレスです。
ストレスが強い状態で、自分の気持ちや行動を調整することは発達特性の有無にかかわらず非常に難しいことです。
ストレスがかかる状況では「闘争か逃走か」という反応をつかさどる脳の扁桃体のスイッチが入りやすいです。
扁桃体に行動が支配されると、理性的な行動より本能的な行動が出やすい状況になります。
そこで、スパーク運動療育では、まず共感することでストレスを下げることを大切にしています。
子どもが発した気持ちや言葉、行動に寄り添い、認めることで共感的な関わりをしています。
一見意味のなさそうな何気ない仕草も、療育士達は拾い上げて共感します。
共感はストレスを下げるだけでなく、「じぶんを理解してもらえた」ということで自己肯定感を高めることにもつながります。
自己肯定感は自分の価値をポジティブに認めることが出来る気持ちのことです。
自己肯定感はチャレンジの原動力になります。
このように、まず共感をすることで心を良い状態にします。
そのうえで遊びを通じ様々なやり取りをしていくことで子どもたちの感情を育んでいきます。
ストレスが低い状態であれば、自分の気持ちを整理することや行動を調整することもしやすくなります。
自閉症スペクトラムと言われる子たちは先天的な脳の特性があると言われています。
1つは形質的な違い
もう1つは機能的な違いです。
自閉症スペクトラムのある子たちの脳は「視覚野」につながる脳神経の回線が多いと言われています。
そのため、視覚的な記憶に優れていたり、「物」への興味を持ちやすかったりするそうです。
他にも、左側の側脳室と呼ばれる脳の空間が大きく、頭頂葉が圧迫されることでワーキングメモリが妨害されているという事例も報告されています。
ワーキングメモリが妨害されると、同時に複数の作業や運動をこなすことが苦手になりやすいです。
機能的な特性についても少しずつわかってきたことがあります。
定型発達とされる人たちと比較して、自閉症スペクトラムの人たちは内側前頭前野、後部帯状回といった「社会脳」をつかさどる部分の機能的つながりが弱いということがMRI画像で示唆されました。
これら「社会脳」と言われる脳領域は、自己内省や他者の気持ちを推測するときに使われるとされています。
こういった脳の形質的、機能的な特性は必ずしも悪いものではありません。
ですが現代社会で生きていくときに、苦労や不安があるのは事実です。
そこで必要になるのが療育です。
脳には可塑性(変化する性質)があります。
脳は使うことで変化します。
たとえ先天的な回線が変わらなくても、繰り返し刺激を与えて使うことで迂回路が出来ます。
スパーク運動療育では遊びを通じてたくさん体を動かし、人と関わることで脳をたくさん使います。
特に自閉症スペクトラムの子どもたちにはスパークのような積極的な関わりは効果的です。
その中で少しずつ脳は発達していきます。
少し難しいことを書きましたが、療育での取り組みは明快です。
・遊びの中で体を動かし、人と関わること
・子どもに共感し、ストレスを緩和することで社会脳が発達しやすい状況を作ること
(→ストレスは心身共に膨大なエネルギーを消耗するため)
それを追求したのがスパーク運動療育で提供している「豊かな遊び場」です。
脳科学的なことを踏まえたアプローチは、最終的に子どもの基本である「遊び」に帰結します。
【参考文献】
・Minyoung Jung et al: Default mode network in young male adults with autism spectrum disorder: relationship with autism spectrum traits. Molecular Autism 2014.
こんにちは!
今日は久しぶりに療育の様子をお届けします!
スパーク西京極では手で握れるサイズのカラーボール(数百個)から、バランスボール(5~6個)、特大ビーチボール(2個)まで様々な種類のボールを取り揃えています!
今日は色んな大きさのボールで押し合ったり転がしたり。
転がすのはやっっっ!!!笑
走りながら転がすというのは、同時に2つのことをする運動です。
発達に特性があるお子様の場合はそういった運動が苦手なこともありますが、スパーク西京極では遊びを通じてそういった運動にもたくさん触れることが出来ます。
他にも投げたり蹴ったり、思いっきり体を動かして一緒に遊びましょう!!
子どもたちは、衝動的な行動、問題行動と呼ばれる行動を起こすことがあります。
問題行動は社会的規範などに照らし合わせた時に好ましくない行動を指します。
かつては「問題行動を起こす困った子だ」という認識でしたが、スパークではそのような捉え方をしていません。
問題行動を起こしたくて起こしているのではなく、感情や考えが理解されないストレスとして行動に表れることがあると捉えています。
特に先天的に特性を持っている子どもたちは、そうでない子どもたちとは自身を表現する方法が違ったり、身体的な特徴があったり(感覚過敏等)、与えられる課題と自分の能力のギャップが大きかったりします。
すると様々な面で大きなストレスを受けることになります。
慢性的にストレスや不安を感じることで、衝動的な行動や問題行動といったものが出やすくなってしまいます。
スパークでは遊びを通じて感情を発達させ、情動や行動を自己調整(セルフレギュレーション)できるようアプローチをしています。
子どもたちが遊びの中で表現する動きや表現に共動・共感すること(感情や感覚を共有すること)を第一にしています。
一緒にその遊びや動きをする、褒める、そこからやり取りを広げていくという関わり方をしています。
この関わりを続ける中で子どもたちのストレスの緩和、自己肯定感の高まり、感情の発達を促します。
そして最終的に情動や行動を自己調整する力がついていくことを目指しています。
1月30日(木)、1/31(金)の2日間にスキルアップ研修を行いました。
初日は午後の療育にスパーク本部から清水先生と酒井先生が来てくださり、実際の療育を見てもらってアドバイスを頂きました。
2日目は朝から夕方まで座学および実技研修をしていただきました。
スパーク運動療育では子どもたちと「共動・共感する」という関わり方を通じて、感情を発達させることで、コミュニケーション力を育むことを主目的としています。
そして、それをより良い形で実現していけるよう常に最新の脳科学、発達心理学等を追いながら療育を行なっています。
定期的にスキルアップ研修、OJT研修があるのも科学的根拠を現場に落とし込み、知識や関わり方を常にアップデートするためです。
今回も本部の先生方からたくさんアドバイスを頂きました。
ディスカッションの時間も設け、普段の疑問や改善点を話し合うこともできました。
2日間ともスタッフ全員参加とはなりませんでしたが、後日研修や研修資料を通じてスキルアップを目指します。
写真は2日目の集合写真。