スタジオから日々のあれこれお届けします
体を動かして遊ぶ時間は、子ども達の運動の発達だけでなく、身辺の自立やこころの発達とも密接に関わっています。
文部科学省が発表している調査結果をもとに紹介していこうと思います。
テレビやスマホ、ゲームを一概に「悪い」とは言いません。
ですが、便利な娯楽用品も充実している反面、体を動かす時間や場所が年々減少しています。
子ども達を取り巻く環境の変化が、子ども達の発育発達にも影響を与えています。
文部科学省の調査をもとに、明らかになっていることを列挙していきます。
活発に体を動かす時間が長い子ほど、、、
・朝スッキリ目覚めやすい傾向
・テレビの視聴時間を守る割合が高い傾向
こういった生活習慣に関することは、悩みの種にもなります。
傾向にあるというだけで、運動すれば自動的にそれができるようになるわけではありません。
しかし、体を動かすことで睡眠や食事のリズムも整いやすくなりますし、精神的な安定も得やすくなります。
そういった要因から、生活習慣が整いやすくなると考えられます。
生活習慣のみに限らず、身辺自立に関することも運動量に影響を受けます。
活発に体を動かす量が多い子ほど、、、
・食事を意欲的に食べる割合が高い傾向
・遊びや食事の片づけを積極的にできる割合が高い傾向
・衣服の着脱を自分で行うことが多い傾向
・手や顔を自分で洗える割合が高い傾向
そんなことまで関係しているの?
という感じかも知れませんが、関係しているようです。
人間である以上、心身の発達をバラバラで捉えることはできません。
相互に影響し合って発達していきます。
活発に体を動かす量が多い子ほど、、、
・園に楽しそうに出かける割合が高い傾向
・1日の出来事を保護者に話すことが多い傾向
・1つのことに集中できる力が高い傾向
・急な癇癪などを起こす頻度が低い傾向
体を動かすことは人として本来ある欲求です。
子ども達はそれを十分に満たすことが出来ていることで、感情的な安定や集中力を得やすいと言われています。
遊ぶ時間、空間、仲間が減っていることが何より残念な環境変化ですが、
調査によると、約半数の子どもが6歳になる頃にはスマホやビデオの操作を1人で出来ると言われています。
便利で楽しい娯楽が増える反面、子ども達に必要な「体を使った遊び」に費やせる時間が減っていることが危惧されています。
便利なものと上手に付き合いつつ、体を動かして遊ぶ時間を確保していきたいですね。
参考記事・文献
・体力向上の基礎を培うための幼児期における実践活動の在り方に関する調査研究報告書:文部科学省 (mext.go.jp)
・幼児期運動指針実践ガイド 日本発育発達学会 編 杏林書院 2014
運動が自閉症スペクトラムの子たちに対して効果があるのか。
日進月歩で研究が進んでいます。
2020年に発表された
Impact of a Physical Exercise Intervention on Emotion Regulation and Behavioral Functioning in Children with Autism Spectrum Disorder
(自閉症スペクトラム児の情動コントロールと行動機能に対する身体活動の影響)
という研究では、8~12歳の自閉症スペクトラムと診断された子たちに対して12週間のジョギングに取り組んでもらいました。
すると、ジョギングに取り組んだ子たちは、そうでない子たちと比べて自身の情動を制御する力が伸びているということが明らかになりました。
情動というのは、嬉しい、悲しい、怖い、怒りなどを示す急激で強い感情のことです。
情動のコントロールが上手くいかないと、
思い通りにいかない時などに強い癇癪を起してしまい、どうしようもなくなってしまったりします。
ジョギング、つまり走ることってとてもシンプルな運動ですよね。
それだけでも成長が見られるわけですから、発達には心身の強いつながりを感じますね。
自閉症スペクトラムと運動に関する研究はまだまだ少ないですし、どういう関係があるのかはこれからの研究に期待です。
それでも、2016年の
A systematic review of the behavioural outcomes following exercise interventions for children and youth with autism spectrum disorder(自閉症スペクトラム児に対する運動介入後の行動変化について)
というシステマティックレビュー(たくさんの研究をまとめて分析したもの)においても、
運動の効果が認められています。
ジョギング、水泳、ダンス、格闘技からヨガまで、様々な運動で効果が確認されています。
「楽しい」と思える範囲で体を動かして遊ぶ機会をたくさん作ってあげたいものですね。
もちろんスパーク西京極でも、遊びの中で子どものペースに合わせて体を動かしていただいています。
「運動」といった固い枠組みだとなかなか楽しんで取り組めないこともあるので、
「遊び」ということで、何よりも「楽しい」を大切にアプローチさせていただいております。
この記事の参考文献
☆この記事の結論
【たくさん抱っこやハグをしてあげてください。愛着形成、対人関係の向上、運動機能の向上、ストレス軽減等の発達障害児にとって大きなメリットがあります】
発達障害は悩の機能的な違いと言われています。
ところが、最近では「全身の神経ネットワークの機能的な違い」というような考え方もされています。
どういうことか、少し説明します。
人の脳は神経細胞のかたまりです。
そして、神経細胞は全身に張り巡らされています。
この脳と全身のネットワークを駆使して、自分の内外を感じたり、行動や感情を起こしたりしています。
その中でも特に繋がりが強いと言われているのが、腸と皮膚です。
腸は脳に続く神経細胞の多さと、脳以上にドーパミンなどのホルモン分泌が盛んです。
皮膚は、誕生の時に脳と同じ発生経路をたどったり、脳にあるのと同じ物質があったりします。
腸は第二の悩、皮膚は第三の悩(露出した悩)と言われています。
実際、発達障害と言われる人たちは便秘や下痢、偏食といった腸に関わるトラブル、
感覚過敏や鈍麻、ボディイメージの低さなど皮膚に関するトラブルが多いです。
このことから、全身の神経ネットワークの機能的な違いという考え方も出てきています。
皮膚への刺激、すなわち触覚への刺激を上手に使うことで、発達障害だけでなく大人から子どもまで全ての人にメリットがあります。
発達障害を持つ人は特にそれが必要です。
ポイントは以下のような心地よい刺激です。
・信頼している人からの抱っこやハグ
・優しくなでてもらう
・柔らかいもの(柔らかいボールやマット、ソファー、タオルetc)
・その他、その子が好きな触感のもの
信頼できる人とのハグや抱っこは皮膚を通じてオキシトシンの分泌がされます。
結果てきに愛着形成、ストレス低下、安心、免疫力の向上などの効果があります。
愛着形成は将来的な対人関係スキルにも影響します。
普段から沢山抱きしめてあげてください。
特に不安やストレスでつらそうなときの保護者からのハグは何にも勝る特効薬です。
泣いて保護者や信頼できる大人に抱き着くのは、自然なことです。
子ども達は自分で自分を落ち着ける方法を既に知っています。
怪我をして痛いときに、患部を優しく撫でてもらうと少し痛みがマシになったことはありませんか?
これ、本当にマシになっているようです。ちゃんと科学的にも分かってきています。
詳しい解説は省きますが、
痛いときは、局所的に神経が過敏になっていることもあります。
優しく触れることでそれが落ち着くようです。
神経の落ち着きは体だけでなく、心も落ち着けてくれます。
タオルやマットなどの柔らかいものにくるまれたり、もしくは好きな触感の物に触れることでも気分を落ち着かせてくれる効果があります。
何かしら好きな触感のものがあれば、それを身近な所に用意しておくのも良いかもしれません。
ただ、発達に特性があると、「好きな触感」も独特な場合があります。
危なくない限り、「そうなんだ」と受け入れてあげることも大切かもしれません。
皮膚から入る触覚の刺激全般は、運動機能の発達の土台となります。
自分の体への認識を高め、「ここに腕があるんだ」「これくらいの長さか」「これくらいの力加減か」「ここが痛い」といったことを理解するのに繋がります。
こういった認識をボディイメージと言いますが、発達障害と言われる人たちはボディイメージに鈍さがあることも少なくありません。
ボディイメージの鈍さは運動機能や身辺自立に遅れが生じてしまう一因と考えられています。
運動と皮膚は関係なさそうに見えても実は繋がっています。
そういった意味でもたくさん触ってあげて下さい。
また、いろんなものを触らせてあげてください。
いろんなところを歩かせてあげてください。
心と体、全てが繋がって1人の人格が形成されています。
関係ないように見える皮膚ですが、実はとってもとーーっても大切な役割を担っています。
愛着形成から運動機能まで、皮膚を通じたお子様との暖かい触れあいで発達を促してあげてください。
特に神経細胞がぐんと成長する乳幼児期を大切に。
今回は5歳の運動発達の段階についてです。
5歳の段階になると、体を動かすことそのものが上手になるのはもちろんですが、運動を通じて心の調整ができるようになっていきます。
*発育発達のスピードには個人差があり、実年齢とそれとが必ずしも一致しないこともあります。
実年齢ではなく、発達の段階に合わせた関り方が大切になります。
5歳の段階になると、4歳の頃よりも不安定な遊具の上や、不安定な姿勢での遊びが上手になります。
年齢が低い程、姿勢制御の視覚への依存度が高いですが、
4歳、5歳となるにつれ徐々に他の感覚(筋感覚やバランス感覚など)も発達してくることが影響しています。
5歳さんになるとずいぶん体の軸もしっかりとしますが、
姿勢の制御が確立されるのは10歳ころまでかかるので、もう少し先です。
シンプルな運動能力を挙げると、片足立ちで10秒近くキープできるようになるのもこの頃です。
不安定さへの対応が可能になるので、竹馬や木登りといったバランスを取る遊びにチャレンジできます。
これらは幼稚園によっては運動会でも年長さんの課題として取り入れられてます。
この頃には自転車も乗れるようになります。
指先もますます器用になります。
各指が独立して器用に動かせるようになるので、お箸を使って食べたり、文字を書いたりといった就学に向けた日常生活での指先の運動にも取り組み始めます。
お箸やペンを扱うことは3~4歳さんでも可能ではありますが、5歳さんではそれがスムーズになります。
静的三指握りと言って親指、人差し指、中指が近付いたぎこちない握りだったのが、
4~6歳ころになると動的三指握りといって、薬指と小指が曲がり、残りの三指が細かく動くためです。
キャッチボールができるのもこの頃。
キャッチボールは相手と自分の動きを合わせたり、予測をしたり、動きを臨機応変に調整したり。
そーっと投げたり、思いっきり投げたり。
こういった運動を調整する経験を通じて、体に対する手ごたえを感じることで心の調整に繋がります。
そーっと動くことで慎重にやってみる気持ち、
思いっきり動くことと、活発な気持ち。
心と体は生まれたときからリンクしていますが、5歳頃からはこの調整の力が育ち始めます。
「もう5歳なのに、全然出来ない」と不安になられる方もいらっしゃるかもしれませんが、
飛び級のような発達は出来ないので、今どの段階かを見極めた上で、お子様1人1人に合わせた接し方が必要になります。
1~4歳までの運動発達も過去の記事にまとめてありますので、ご参照ください。
そして何よりも運動は経験の数が大切になります。
お外で遊ぶ経験、日常生活や工作を通じて指先を動かす経験など、可能な範囲で機会を増やしてあげることが発達に繋がります。