発達に不安がある子たちは自らの体をコントロールすることが苦手な場合が多く、目の運動も例外ではありません。
目の運動に苦手があると、姿勢やバランスの保持のみならず、記憶力、空間認識能力、周辺視野など様々な所につまずきが出てきます。
今回はスパークでも大切にしている「眼球運動」について詳しく書いていこうと思います。
発達障害と言われる子たちは、筋肉の緊張が低かったり、筋力発揮のコントロールが難しかったりします。
それは手足や体幹の筋肉に限った話ではありません。
目や口といった顔のパーツを動かす筋肉にも当てはまります。
今回のテーマである、
視力とはまた違った「目の力」とは「目の筋肉による眼球の運動(以下:眼球運動)」によって獲得されます。
つまり、筋肉のコントロールが苦手だと眼球運動にも支障が出ます。
視力は眼球そのものが持つ能力を評価しています。
眼球運動の能力は、目を動かす筋肉の機能に左右されます。
私たちが対象物を見る時、主に3パターンあります。
1.首をひねったり曲げたりして、顔も目も目的の方向に向ける。
2.顔は固定したまま、目だけで目的の方向を見る。
3.目を正面に向けたまま、首だけをひねって顔は別の方向を向く。
(正面を見たまま、顔を左に向けるなど)
1の場合は、首の筋肉、目の筋肉の両方を同時に使っています。
2の場合は首の筋肉は動かさず(固定するという使い方)、目の筋肉だけを動かしています。
3の場合は、目の筋肉と首の筋肉の両方を使っていますが、方向は反対です。
これが難しい子たちがいます。
首の筋肉と目の筋肉の共同と分離が苦手です。
療育中も鬼ごっごをしているとすごくわかりやすいです。
鬼を横目で追うということができません。
顔ごとその方向を向きます。
逃げる時は逃げる方、追いかける時は追いかける方向だけに顔も目も、子どもによっては体も向いています。
眼球運動には以下のような種類があります。
頭部が動いた場合、それとは反対方向に眼球運動が生じることです。
そうすることで空間に対する眼球の向きを一定に保つことができます。
今このブログをご覧になっている画面を見たまま、顔を上下左右に動かしてみて下さい。
この時の眼球運動です。
VORには前庭感覚の発達も関係しています。
前庭感覚については、こちらから。
頭部が動かないように固定して、動く物体を目だけで追う運動です。
パソコンで見ていらっしゃる方なら、マウスをランダムに動かしてみてください。
頭を動かさずとも、マウスのカーソルを目だけで追うことができます。
この時の眼球運動です。
見たい対象に高速で眼球を動かす運動です。
今読んでいるこの文章で
改行をするたびに
次の
段落に素早く視点を
移しています。
この時の
眼球運動を
サッケードと呼びます。
あえて、
改行を多めに書いてみました。
いずれの眼球運動も生きていくうえで必要な能力で、これが出来ないために様々な悩みに繋がります。
・周辺視野の狭さや空間認識能力の低下で物にぶつかりやすくなる
・正中位の認識が難しく、真っ直ぐ座ることやバランスを取ることが難しい(真っ直ぐが分かりにくい)
・字や絵の認識が苦手
・黒板の字を書き写すのが苦手
・集中力や記憶力に影響が出る
・目と体の運動の協調が難しい
・視界から外れたボールのキャッチなどが難しい(目で追えなかったり、頭部が傾きすぎてこけたり)
スパーク運動療育®においても「眼球運動」は重要な運動として位置づけられています。
スパーク西京極では以下のような眼球運動遊びを取り入れています。
発達年齢に応じた内容で行います。
風船を飛ばしてキャッチしたり、お互いにポンポンと弾いてラリーをしたり。
ルール遊びができる時は、風船バレー対決をしたり。
子ども達に人気なのは、ジョイントマットで大きな風を起こして、不規則に動く風船を追いかける遊びです。
遊びのコツは、正面からくる風船に慣れてきたら、様々な方向に風船を飛ばしてあげることです。
視界の中だけでなく、視界の外にも飛ばします。
シンプルなキャッチボール、転がしあいっこ、ボール避けなど。
子どもが投げる運動も別の意味で大切ですが、向かってくるボールを目で追う遊びで目の力が鍛えられます。
遊びのコツは風船と同じで正面からくるボールに慣れてきたら、上下左右様々な方向、軌道でボールを投げてあげます。
キャッチや避けることが難しい場合は、スピードを落としてあげたり、軌道を教えてあげると良いです。
手に持ったラミネート(好きなキャラクターのぬいぐるみなどでも可能)を様々な方向に振って、子どもにそれをタッチしてもらう遊びです。
コツは前後左右斜め上下、様々なスピード、近さ、奥行きで行います。
赤ちゃんのころからおもちゃや大人の指を目で追わせるのは効果的です。
この時も前後左右斜め上下、様々な方向にまんべんなく行います。
姿勢が悪い、運動が不器用など様々なお悩みを聞くことがあります。
必ずしも一つの機能の改善だけで解決する問題ではなく、複数の要素が絡み合っています。
眼球運動もその要素の1つです。
子ども達は遊びを通じて様々な方法で体を使い、生きていくうえで必要な機能を1つ1つ獲得していきます。
眼球運動を含め子ども達の発達をサポートすべく、スパーク西京極でも遊び(運動とやりとり)をメインにした療育を行っています。
ぜひご家庭でも眼球運動遊びを取り入れてみてください!