数字やひらがなに遊びを通じて親しむ

数字や平仮名は小学校に入ってから学ぶものなので、無理に未就学の頃から勉強する必要はありません。

それでも、なかなか興味を持ってもらえないと保護者としては不安が残ります。


というわけで、今回は数字や平仮名になかなか興味を持てなかった子たちへの遊びの中での親しみ方を、

スタジオで実際に行ってきた遊びを例にしながら紹介していこうと思います。


また、将来的に数字や平仮名を覚えていく為に効果的な遊びを脳科学的なところと絡めて少し紹介できればと思います。


遊びや普段の生活で

まずは数字や平仮名を好きになってもらうことや興味を持ってもらい、触れる機会をたくさん作ることを大切にしていました。

まず覚えなくても良いので、遊びの中で自然と数字や平仮名を織り交ぜていきました。

そうしているうちに、子ども達の方から「書きたい」「なんて読むの?」という言葉が増えてきました。



からだすごろく

「からだすごろく」と言うとなんだかすごい感じがしますが、ルールや方法は普通のすごろくと同じです。

ただ、マス目をマットや台や段差、細く丸めたタオルなどにして、駒を自分自身にするというものです。

さいころでも良いですし、1~10までを書いた数字カードでもOKです。

スパーク西京極では、段ボールとカラーテープで作ったカードやさいころを使用しました。


出た目の数だけ自分自身が進むので、数の概念を体感しやすく、足場に変化をつけることで運動としての効果も期待できます。


1つだけ注意点が、、、。

子どもが勝つ様にしないと、心が折れてしまう場合があるので、こっそりと細工をしておく必要があります(苦笑)

なので、数字カードを引いて進む方がやりやすいです(笑)


得点ボード

年長さんくらいになると、「対決したい!」と言う子たちも多いです。

風船バレーボールやサッカー対決など、得点を競い合うゲーム遊びはとっても良い。


ホワイトボードに得点表を作ります。

得点表をつくるとなると、対戦者の名前を書かないといけません。

名前の下に得点を書いていきます。

なんとか書けるようになってほしい「自分の名前」に親しむ機会にもなります。

得点が入る度に数字も増えていくので、数字とも親しめます。


初めは保護者が書いてあげて良いです。

興味を持ち始めると、「自分で書きたい」と言うようになります。


この遊びでも注意が必要。

大人が勝つのはたまにでいいです(笑)


先生ロボット

おんぶでも肩車でもOKです。

大人と子どもでとりあえず合体してロボットになります。

このロボットは、さいころの目や数字カードで出た数だけ歩きます。


もしくは、出た数字だけスピードがアップしたりダウンしたりします。

(10はとっても速くて、1はゆっくり など)


ロボットに名前を付けて、体に貼りつけても良いですね。

ひらがなに親しむ機会になります。


平仮名(数)かいじゅう

この遊びはある程度ひらがなを覚えてきた子で行いました。

平仮名かいじゅうは、ひらがなの書かれた紙を全身に貼りつけた怪獣です。

この怪獣をやっつけるには、怪獣が言った平仮名を取る必要があります。

平仮名が全部取れると怪獣は降参します。


海馬をたくさん使おう

将来的にひらがなや数字を覚えていくために、メインとなる領域は海馬と呼ばれています。

海馬は文字や運動など、あらゆるものを「憶える」ために必要な領域です。


文字そのものに触れる機会だけでなく、海馬を刺激するような遊びで土台となる力を養ってあげることも発達に効果があります。


海馬をよく使う遊びとして、神経衰弱などが有名です。

神経衰弱は無理にトランプでなくてもよくて、好きなイラストなどでも代用できます。

「覚える」という作業を使う遊びが効果的です。

最近では知育玩具も充実しているので、いろいろ調べてみるのも面白いかもしれません。


「楽しい」を第一に強制はしない

とにかく楽しいを第一に考えて、強制をすることはしません。

強制をしてしまうと、ひらがなや数字そのものが嫌いになってしまいます。

まずは興味を持ってもらうことを大切に、今回紹介したような遊びをスパーク西京極でも子ども達の気持ちに寄り添いながらおこなってきました。


こどもたちのごっこ遊び④:一緒に遊ぶ人数が年齢とともに少しずつ増えていく

ごっこ遊びを自分以外の他者と楽しむためには、「イメージを共有すること」が必要になります。


おままごとをするなら、家族のイメージ、仮面ライダーごっこなら、仮面ライダーのイメージがある程度共有されていないと成立しません。


1~2歳の頃に始まる初期のごっこ遊び(過去のブログを参照)では、そのイメージの共有がまだまだ上手くいかないので、お互いにかみ合っているのかいないのか、なんとも言えない感じになることもよくあります。


大人や年長の子が間に入って、イメージを繋ぐ役割をしてくれると、子ども同士で比較的スムーズにイメージの共有が可能になります。


他者とイメージを共有する

もう少し発達が進んでくると、他者とイメージを共有できるようになってきます。

そうすると、大人やお友達とまずは1対1で遊べるようになります。

おおよそ発達年齢が3歳になるころにはそれが可能で、「ごっこ遊び」が成立しているなあという印象を受けます。


ただし、まだまだ遊ぶ対象は主に1対1です。

目の前の大人、目の前のお友達とのやり取りがメインで、複数人で集まって集団でごっこ遊びをするのはもう少し先です。

一緒にその場に集まって遊んでいるような雰囲気もありますが、イメージを複数名で共有できていたりできていなかったりします。


この時も大人やごっこ遊びの上手な子がイメージを繋ぐ役割を担うことで、1対2~3人で遊べたりします。


遊ぶ対象が増えてくる

3~4人集まって、イメージを共有しながらごっこ遊びを展開するのは、おおよそ4歳の前半頃から。

この頃には大人が居なくても、子ども同士で共通のイメージを共有して遊び始めます。


ごっこ遊びのイメージ世界での簡単なルールを守るようになったり、必要なものを一緒に作るようになるのもこのころからです。


とは言え、「はじまる」というだけで完全に切り替わるわけではないので、別々の場所で同じような遊びをする「並行遊び」も行います。

少しずつお友達や大人などの他者と一緒イメージを共有する機会が増えていくような印象です。


その中で子ども同士巻き起こる衝突や問題解決、役割、イメージ共有などを通じて、子ども達は生きていくのに必要な力(想像力や思考力、共感性など)を伸ばしていきます。



遊び足りていない子もいる

遊びは子どもの発達に不可欠です。

ところが、様々な理由があって遊び足りていない子たちもいます。

遊び足りていないとは、疲れてエネルギーの限界まで遊ぶという意味ではなく、(それも大事ですが)

発達の段階として必要な遊びを、必要なだけ遊び込めていないというような意味合いです。


時間や空間が昔より減っていることはもちろんのこと、

その子の持つ個性や特性の影響で、他の子と遊ぶ機会が減ってしまうということもあります。


スパーク西京極では、子ども達1人1人の発達に必要な遊びの段階を見極め、大人が積極的にたくさん関わることで十分な遊ぶ機会を創出し、発達を促しています。





こどもたちのごっこ遊び③:身近なものを見立てる想像力

ごっこ遊びは、子ども達の想像力を伸ばすのにとても良い遊びです。

ブログにはごっこ遊びの素晴らしさを複数回に分けて書いています。

前回は、初期のごっこ遊びについてでした。


今回はそれと関連して、ごっこ遊びの中で必ず出てくる「見立てる」という行為について考えていきたいと思います。


遊びに必要なものを「見立てて」用意する

おままごとで遊ぶためには、必要なものを準備しないといけません。

例えばお料理のシーン。

作りたい料理に、そこにある具材のおもちゃだけでは足りないことがあります。


焼きそばを作ろう!

と思ったのはいいけれど、具材のおもちゃはにんじんや玉ねぎしかない。

そこで子ども達はどうするか。

縄跳びを麺に「見立てて」みたり、茶色いブロックをお肉に「見立てて」みたり。


この見立てると言う行動には想像力が必要です。

ごっこ遊びでは「本物」を使いません。

「偽物」もしくは「見立てたもの」を本物のようにイメージして使う必要があります。


そうした経験を積む中で、想像力が伸びていきます。


だからといってリアルなものを全く置かないと言うのは、また良くなくて

2~3歳ころはイメージそのものがはっきりしていないので、上手に見立てたり製作したりすることは難しいようです。

なので、ある程度リアルなもの、わかりやすいものを準備したり、大人が見立ててあげるなどの援助が効果的です。


スパーク西京極に通う子ども達もごっこ遊びが大好きです。

1人1人の段階を見極めながら、ごっこ遊びを行い、子ども達と関わっています。

もちろんごっこ遊び以外も!




こどもたちのごっこ遊び②:普段の生活の再現から始まる

前回のブログからの続きで、しばらくは子ども達のごっこ遊びについて深堀していきます。


ごっこ遊びが始まるのは1歳ころからと言われます。

基礎的なイメージの力が芽生えてくるのが1歳半頃ですから、それと同じか少し後にごっこ遊びが出現するようです。


初期のごっこ遊びは、まだ他者と複雑な関わりがあるという感じではありません。

おままごとなどで想像されるごっこ遊びはもっと後です。

その基礎となる遊びがこの頃から始まります。


模倣遊び・再現遊び

初期のごっこ遊びは「ごっこ遊び」というよりは「模倣遊び」「再現遊び」と言ったほうが正確かもしれません。


日常生活で印象に残っている事柄をイメージし、それを真似する感じで遊びます。

例)

・洗濯ものを干すふりをする→母親が家事をする姿の模倣

・コップに砂を入れて飲むふりをする→ご飯の時の再現


などなど、特に大人の様子をよく見ながら、遊びの中でそれを表現します。

これが初期のごっこ遊びです。

まだまだ「なりきっている」とか「役割」とかそういうのはありません。


お母さんになりきって洗濯ものを干しているのではなく、洗濯物を干すお母さんを真似ているような感じです。

その場に他の子や大人がいても「一緒にしている」という感覚もまだまだ少ないです。


なので、この時期の関わり方としては、役割等を設定してあげるというよりは「反応」を大切にしてあげることが必要です。


大人が内容をくみとってあげる

1歳の子どもが、お皿に砂を入れて食べるふりをしていたとします。

もしくは、大人の私たちにそのお皿を差し出してきたとします。


あくまでもまだまだ再現をしている頃ですから、大人の私たちが「あ、これはご飯だな」とくみとってあげて、

「いただきまーす!」「ぱくぱくぱく」と言って食べるふりをして、再現の世界を充実させてあげます。

まだまだそこから大きく遊びを膨らませることは難しいので、子どもたちは再び繰り返したり、自分も「いただきます」の真似をしたりします。


イメージの共有が始まったり、始まらなかったり

2歳頃になるとかなりイメージの力も発達してきますし、言葉も増えてきます。

ただ、まだまだお友達とイメージをしっかり共有し合うことは難しいので、

噛みあっているような噛み合っていないような感じになります。


積極的にイメージを共有しようとする気持ちが出てくるので他の子を誘ったり、

「〇〇買ってきてー!」みたいな感じで巻き込もうとしてみたりします。

そこで相手の子が乗って来てくれると、遊びが発展していきますが、できたりできなかったりです。


まだまだ各自で遊ぶ並行遊びの時期。

協力して1つの家族をつくると言うより、あっちこっちでお家?お母さん?が林立しているような感じです。

各々が各々の世界観で遊んでいます。

大人の助けがあると、物の貸し借りができて関わりがあったり、イメージを共有できることがあったりします。


こどもたちのごっこ遊び①:ごっこ遊びで育む力

子ども達は様々な遊びを通じて発達をしていきます。

その一つが「ごっこ遊び」です。


おままごとをしたり、好きなキャラクターになりきったり。

ほとんどの人が多かれ少なかれ通ってきた道ではないでしょうか。


そんなごっこ遊びについて、数回に分けてブログに綴っていこうと思います。


なぜ子ども達は熱中するのか?なぜ発達において大切になるのか?

どうやって関わればいいのか?

いっしょに考えていこうと思います。


子ども達との関りのヒントになれば幸いです。

発達の段階に応じた関わり方は次回以降書いていこうと思います。


ごっこ遊びはいつまで続く?

ごっこ遊びをするのは、おおよそ1歳~7歳ごろまでと言われています。

発達の段階次第でこの期間の出現が早くなったり遅くなったり、もしくは短くなったり長くなったりするので、

あくまでも目安として思っていただければと思います。


「7歳ごろまで」

言い換えれば「ごっこ遊びに熱中できるチャンスは7歳ごろまで!」です。


この間に、大人やお友達、もしくは1人でたくさんごっこ遊びをしていくことで、子ども達は次のような力を伸ばしていきます。


◇想像力

◇創造力

◇思考力

◇共感する力


ごっこ遊びで伸びる力

ごっこ遊びでは、ごはんを食べる、家事をするなどの日常生活のワンシーンを再現したり、好きなキャラクターになり切ったり、設定した世界観でアドリブでやりとりをしたりと様々です。


これって実はとっても高度なことで、

本物ではないのに、それを本物のように見立てる想像力。

例)ひもをラーメンに見立てる


遊びたい世界観を再現する為に必要なおもちゃを揃え、物に見立てたり組み立てたりする想像力、思考力。

例)積み木でお家を作る


アドリブでやりとりをする想像力。

遊びの中に目的を見出し、それを実現する方法を思考する力。


思考力は将来的に数字を理解したりするためにも必要になる力です。

数字に早くから触れることも大切かもしれませんが、まずは遊びが先にきます。


「共感する力」については次章で。


ごっこ遊びと他者への関わり

ごっこ遊びをする中で、子ども達は他者を気遣う行動を体験します。

例えばおままごとをするとなれば、赤ちゃん役や弟役に対してご飯を与えたり、物を多く分けてあげたりします。

その経験が実生活に活かされ、人を助けたり、お菓子を分けたりといった行動に繋がります。


他にも、キャラクターになりきってごっこ遊びをするにしても、全員が主役になれない時があります。

全員が仮面ライダーだと、世界は平和でライダーの仕事はありません。

全員がお母さんでは家族ごっこは出来ません。


怪獣役やお父さん役を誰かがやらなければ成立しません。

そんな状況に直面し、互いに役割を交代したり、我慢して遊んでいくことも、

想像力や共感する力を働かせる機会になります。


もしくは、お母さん同士のやりとりを再現することで丸く収まる場合もあります。

どうしたら遊べるか、それを大人と一緒に考えることも思考力に繋がります。



もちろんごっこ遊びの中で高まる力はこれだけではありません。

遊びの中で自然と指先を使ったり、走り回ったり、はたまた喧嘩をしてしまったり。

それらも全て経験となり、発達の糧となります。


ごっこ遊び要素を入れると片付けてくれる

子ども達に何かお願いをする時にごっこ遊び要素を入れるというのは効果的です。


例えばお片付け。

「片付けなさい」と言って片付けてくれるなら苦労はしません。

そうはいかないわけですから、ごっこ遊びの要素を入れます。


例えば、ボールやブロックを「食べ物」に見立てることができる子なら、

「片付けよう!」ではなく、「食べ物(ブロック)を冷蔵庫(お片付けの箱)に入れよう!」など言って、大人も少し一緒にやってみると子どもも片付けてくれたりします。


子どもも楽しみながら片付けが出来ますし、大人としても助かります(笑)


ごっこ遊びは年齢とともに内容が高度になっていきます。

次回以降はそれを順番に考えていこうと思います。


顔を怪我する子が増えている?子どもは遊びの中で身を守る能力を高める

「顔を怪我する子が増えている」

これは最近になって始まったばかりではなく、数年前から言われています。


顔を怪我してしまうということは、転んだときに手がつけずに、顔から地面に激突してしまうということです。


どうしてこういったことが増えているのでしょうか。


安全性が重要視されるようになったけど、、、、

時代と共に、公園や幼稚園、学校などに設置される遊具の安全性が見直され、落下して頭を打つなどの危険な怪我は減少傾向にあります。

ところが、顔の怪我だけは増加しているようです。


転んだ時や落ちた時に危険を回避する能力が低下しているというのが理由の1つだと考えられています。

=手をつけない


遊具をはじめとして、遊びの中での安全性が確保されてきたことはもちろん良いことですが、

それとともに、危険に対する免疫力が年々低下していることも事実としてあるようです。


遊びの中である程度のびのびと自由に、ちょっぴり危険を伴う経験も必要だそうです。


(★危険な遊びを推奨しているわけではありません。注意事項は守りましょう。)

外で体を動かして遊ぶ量が減っている

安全性が確保されてきたことは素晴らしいことで、その環境をフルに活用できれば良いのですが、

そもそも外で体を動かして遊ぶ量が減っているのも、顔の怪我の増加(手がつけない子の増加)に関係しているようです。


屋外で遊ぶということは、不安定なところや、傾斜のあるところ、よく滑るところなど、様々な足場を経験します。

また、ぶつからない様に気を付けたり、転んだり、遊びの中で様々な姿勢の変化を経験します。

その中で子ども達は少しずつ、上手に転べるようになっていきます。


ところがその量が減っているため、なかなか自分自身で安全を確保する能力が育ちにくいようです。


様々な要素を遊びの中で体得する

子どもたちは、遊びをたくさん経験することで、自分の体を守る術を知っていきます。

安全にかかわる要素は下記の通りです。


・運動面(身体のサイズ感、運動能力)

・精神面(衝動や注意のコントロール)

・知的面(判断する、理解する)

・社会面(ルールを守る)


上手に転ぶ能力は、このうちの運動面に分類されます。

でも、それだけでは自分自身で安全を確保することはできません。

「ここは危ないな」と判断できる能力や、注意散漫になりすぎない能力も必要になってきます。


のびのびできる環境で繰り返し遊び、様々な経験をしていくことでこれらの能力が発達していきます。

遊びの環境自体が昔ほど危なくないこと、そして遊ぶ量が減っていること、これらが相まって顔の怪我が増えています。


解決策は、可能な限り外でたくさん遊ぶことです。

特に発達に特性がある子たちは、定型発達の子よりも十分な量が必要です。


春の暖かさが出てきましたので、スパーク西京極でも外での療育の頻度を少しずつ増やしていければなと思います。


この記事の参考文献

・幼児期運動指針実践ガイド 日本発育発達学会 編 杏林書院 2014 



体を動かして遊ぶ量と、身辺自立・こころの状態の密接な関係

体を動かして遊ぶ時間は、子ども達の運動の発達だけでなく、身辺の自立やこころの発達とも密接に関わっています。


文部科学省が発表している調査結果をもとに紹介していこうと思います。

テレビやスマホ、ゲームを一概に「悪い」とは言いません。

ですが、便利な娯楽用品も充実している反面、体を動かす時間や場所が年々減少しています。


子ども達を取り巻く環境の変化が、子ども達の発育発達にも影響を与えています。


生活習慣と運動量の関係性

文部科学省の調査をもとに、明らかになっていることを列挙していきます。


活発に体を動かす時間が長い子ほど、、、

・朝スッキリ目覚めやすい傾向

・テレビの視聴時間を守る割合が高い傾向


こういった生活習慣に関することは、悩みの種にもなります。

傾向にあるというだけで、運動すれば自動的にそれができるようになるわけではありません。

しかし、体を動かすことで睡眠や食事のリズムも整いやすくなりますし、精神的な安定も得やすくなります。

そういった要因から、生活習慣が整いやすくなると考えられます。


身辺自立と運動量の関係

生活習慣のみに限らず、身辺自立に関することも運動量に影響を受けます。


活発に体を動かす量が多い子ほど、、、

・食事を意欲的に食べる割合が高い傾向

・遊びや食事の片づけを積極的にできる割合が高い傾向

・衣服の着脱を自分で行うことが多い傾向

・手や顔を自分で洗える割合が高い傾向


そんなことまで関係しているの?

という感じかも知れませんが、関係しているようです。


こころの発達と運動量の関係

人間である以上、心身の発達をバラバラで捉えることはできません。

相互に影響し合って発達していきます。


活発に体を動かす量が多い子ほど、、、

・園に楽しそうに出かける割合が高い傾向

・1日の出来事を保護者に話すことが多い傾向

・1つのことに集中できる力が高い傾向

・急な癇癪などを起こす頻度が低い傾向


体を動かすことは人として本来ある欲求です。

子ども達はそれを十分に満たすことが出来ていることで、感情的な安定や集中力を得やすいと言われています。


6歳で半数はスマホやテレビの操作が可能

遊ぶ時間、空間、仲間が減っていることが何より残念な環境変化ですが、

調査によると、約半数の子どもが6歳になる頃にはスマホやビデオの操作を1人で出来ると言われています。

便利で楽しい娯楽が増える反面、子ども達に必要な「体を使った遊び」に費やせる時間が減っていることが危惧されています。


便利なものと上手に付き合いつつ、体を動かして遊ぶ時間を確保していきたいですね。



参考記事・文献

・体力向上の基礎を培うための幼児期における実践活動の在り方に関する調査研究報告書:文部科学省 (mext.go.jp)

・幼児期運動指針実践ガイド 日本発育発達学会 編 杏林書院 2014 

【研究】運動が自閉症スペクトラム児の情動制御の力を高める

運動が自閉症スペクトラムの子たちに対して効果があるのか。

日進月歩で研究が進んでいます。


2020年に発表された

Impact of a Physical Exercise Intervention on Emotion Regulation and Behavioral Functioning in Children with Autism Spectrum Disorder

(自閉症スペクトラム児の情動コントロールと行動機能に対する身体活動の影響)

という研究では、8~12歳の自閉症スペクトラムと診断された子たちに対して12週間のジョギングに取り組んでもらいました。

すると、ジョギングに取り組んだ子たちは、そうでない子たちと比べて自身の情動を制御する力が伸びているということが明らかになりました。

情動というのは、嬉しい、悲しい、怖い、怒りなどを示す急激で強い感情のことです。

情動のコントロールが上手くいかないと、

思い通りにいかない時などに強い癇癪を起してしまい、どうしようもなくなってしまったりします。

ジョギング、つまり走ることってとてもシンプルな運動ですよね。

それだけでも成長が見られるわけですから、発達には心身の強いつながりを感じますね。

自閉症スペクトラムと運動に関する研究はまだまだ少ないですし、どういう関係があるのかはこれからの研究に期待です。

それでも、2016年の

A systematic review of the behavioural outcomes following exercise interventions for children and youth with autism spectrum disorder(自閉症スペクトラム児に対する運動介入後の行動変化について)

というシステマティックレビュー(たくさんの研究をまとめて分析したもの)においても、

運動の効果が認められています。

ジョギング、水泳、ダンス、格闘技からヨガまで、様々な運動で効果が確認されています。


「楽しい」と思える範囲で体を動かして遊ぶ機会をたくさん作ってあげたいものですね。


もちろんスパーク西京極でも、遊びの中で子どものペースに合わせて体を動かしていただいています。

「運動」といった固い枠組みだとなかなか楽しんで取り組めないこともあるので、

「遊び」ということで、何よりも「楽しい」を大切にアプローチさせていただいております。


この記事の参考文献

Brief Report: Impact of a Physical Exercise Intervention on Emotion Regulation and Behavioral Functioning in Children with Autism Spectrum Disorder | SpringerLink

A systematic review of the behavioural outcomes following exercise interventions for children and youth with autism spectrum disorder - Emily Bremer, Michael Crozier, Meghann Lloyd, 2016 (sagepub.com)

発達障害と皮膚からの心地よい刺激

☆この記事の結論

【たくさん抱っこやハグをしてあげてください。愛着形成、対人関係の向上、運動機能の向上、ストレス軽減等の発達障害児にとって大きなメリットがあります】


皮膚は第三の悩

発達障害は悩の機能的な違いと言われています。

ところが、最近では「全身の神経ネットワークの機能的な違い」というような考え方もされています。

どういうことか、少し説明します。


人の脳は神経細胞のかたまりです。

そして、神経細胞は全身に張り巡らされています。

この脳と全身のネットワークを駆使して、自分の内外を感じたり、行動や感情を起こしたりしています。

その中でも特に繋がりが強いと言われているのが、腸と皮膚です。


腸は脳に続く神経細胞の多さと、脳以上にドーパミンなどのホルモン分泌が盛んです。

皮膚は、誕生の時に脳と同じ発生経路をたどったり、脳にあるのと同じ物質があったりします。


腸は第二の悩、皮膚は第三の悩(露出した悩)と言われています。

実際、発達障害と言われる人たちは便秘や下痢、偏食といった腸に関わるトラブル、

感覚過敏や鈍麻、ボディイメージの低さなど皮膚に関するトラブルが多いです。


このことから、全身の神経ネットワークの機能的な違いという考え方も出てきています。


肌への心地よい刺激で様々なメリット

皮膚への刺激、すなわち触覚への刺激を上手に使うことで、発達障害だけでなく大人から子どもまで全ての人にメリットがあります。

発達障害を持つ人は特にそれが必要です。


ポイントは以下のような心地よい刺激です。

・信頼している人からの抱っこやハグ

・優しくなでてもらう

・柔らかいもの(柔らかいボールやマット、ソファー、タオルetc)

・その他、その子が好きな触感のもの


①ハグや抱っこなど

信頼できる人とのハグや抱っこは皮膚を通じてオキシトシンの分泌がされます。

結果てきに愛着形成、ストレス低下、安心、免疫力の向上などの効果があります。

愛着形成は将来的な対人関係スキルにも影響します。


普段から沢山抱きしめてあげてください。

特に不安やストレスでつらそうなときの保護者からのハグは何にも勝る特効薬です。

泣いて保護者や信頼できる大人に抱き着くのは、自然なことです。

子ども達は自分で自分を落ち着ける方法を既に知っています。


②撫でる

怪我をして痛いときに、患部を優しく撫でてもらうと少し痛みがマシになったことはありませんか?

これ、本当にマシになっているようです。ちゃんと科学的にも分かってきています。


詳しい解説は省きますが、

痛いときは、局所的に神経が過敏になっていることもあります。

優しく触れることでそれが落ち着くようです。

神経の落ち着きは体だけでなく、心も落ち着けてくれます。


③心地よいものに触れる

タオルやマットなどの柔らかいものにくるまれたり、もしくは好きな触感の物に触れることでも気分を落ち着かせてくれる効果があります。

何かしら好きな触感のものがあれば、それを身近な所に用意しておくのも良いかもしれません。


ただ、発達に特性があると、「好きな触感」も独特な場合があります。

危なくない限り、「そうなんだ」と受け入れてあげることも大切かもしれません。


④皮膚からの刺激全般

皮膚から入る触覚の刺激全般は、運動機能の発達の土台となります。

自分の体への認識を高め、「ここに腕があるんだ」「これくらいの長さか」「これくらいの力加減か」「ここが痛い」といったことを理解するのに繋がります。

こういった認識をボディイメージと言いますが、発達障害と言われる人たちはボディイメージに鈍さがあることも少なくありません。

ボディイメージの鈍さは運動機能や身辺自立に遅れが生じてしまう一因と考えられています。


運動と皮膚は関係なさそうに見えても実は繋がっています。

そういった意味でもたくさん触ってあげて下さい。

また、いろんなものを触らせてあげてください。

いろんなところを歩かせてあげてください。


さいごに

心と体、全てが繋がって1人の人格が形成されています。

関係ないように見える皮膚ですが、実はとってもとーーっても大切な役割を担っています。

愛着形成から運動機能まで、皮膚を通じたお子様との暖かい触れあいで発達を促してあげてください。


特に神経細胞がぐんと成長する乳幼児期を大切に。


5歳児の運動発達:心と体の結びつき

今回は5歳の運動発達の段階についてです。

5歳の段階になると、体を動かすことそのものが上手になるのはもちろんですが、運動を通じて心の調整ができるようになっていきます。


*発育発達のスピードには個人差があり、実年齢とそれとが必ずしも一致しないこともあります。

実年齢ではなく、発達の段階に合わせた関り方が大切になります。


不安定な状態で体を制御する力が高まる

5歳の段階になると、4歳の頃よりも不安定な遊具の上や、不安定な姿勢での遊びが上手になります。

年齢が低い程、姿勢制御の視覚への依存度が高いですが、

4歳、5歳となるにつれ徐々に他の感覚(筋感覚やバランス感覚など)も発達してくることが影響しています。


5歳さんになるとずいぶん体の軸もしっかりとしますが、

姿勢の制御が確立されるのは10歳ころまでかかるので、もう少し先です。


シンプルな運動能力を挙げると、片足立ちで10秒近くキープできるようになるのもこの頃です。

不安定さへの対応が可能になるので、竹馬や木登りといったバランスを取る遊びにチャレンジできます。

これらは幼稚園によっては運動会でも年長さんの課題として取り入れられてます。


この頃には自転車も乗れるようになります。


文字やお箸

指先もますます器用になります。

各指が独立して器用に動かせるようになるので、お箸を使って食べたり、文字を書いたりといった就学に向けた日常生活での指先の運動にも取り組み始めます。


お箸やペンを扱うことは3~4歳さんでも可能ではありますが、5歳さんではそれがスムーズになります。

静的三指握りと言って親指、人差し指、中指が近付いたぎこちない握りだったのが、

4~6歳ころになると動的三指握りといって、薬指と小指が曲がり、残りの三指が細かく動くためです。


運動を通じて心のコントロールができるように

キャッチボールができるのもこの頃。

キャッチボールは相手と自分の動きを合わせたり、予測をしたり、動きを臨機応変に調整したり。

そーっと投げたり、思いっきり投げたり。


こういった運動を調整する経験を通じて、体に対する手ごたえを感じることで心の調整に繋がります。

そーっと動くことで慎重にやってみる気持ち、

思いっきり動くことと、活発な気持ち。


心と体は生まれたときからリンクしていますが、5歳頃からはこの調整の力が育ち始めます。


経験を多く

「もう5歳なのに、全然出来ない」と不安になられる方もいらっしゃるかもしれませんが、

飛び級のような発達は出来ないので、今どの段階かを見極めた上で、お子様1人1人に合わせた接し方が必要になります。

1~4歳までの運動発達も過去の記事にまとめてありますので、ご参照ください。


そして何よりも運動は経験の数が大切になります。

お外で遊ぶ経験、日常生活や工作を通じて指先を動かす経験など、可能な範囲で機会を増やしてあげることが発達に繋がります。