スパーク運動療育西京極スタジオでは、「運動」と「積極的な関わり」の2本を主軸とした療育を行なっています。
「運動」と聞くと、「何か特定の技能が出来るようになる場所」というふうに認識されがちですが、決してそれだけが目的ではありません。
もちろん、スパークでの遊びを通じた運動で体を沢山動かしてもらうことは「体の使い方」や「不器用さ」の改善にもつながります。
しかし、それ以外にも大切な「運動をする意味」があります。
それが脳の発達です。
もちろん体を制御するのは脳なので、先に述べた「体の使い方」や「不器用さ」、「特定の技能」も関わってはきます。
ですが、スパークで目指すのはもっと根源的で広義な脳の発達がメインになります。
脳の発達とは、体の使い方以外にも感情、社会性など様々な面での発達を意味します。
そして、これらの発達すべてに対して運動が効果的であると科学的にも現場レベルでも証明されています。
例えば、授業を落ち着いて聞いてもらうには、朝に読書で落ち着きの時間を作るより運動をした方が効果が高いなど。
意外かもしれませんが、ちゃんと根拠があります。
少し難しい話かもしれませんが、出来るだけ簡単にご紹介します。
出来れば、運動をしている時(ランニングやスイミング、子どもなら鬼ごっこ等)を想像しながら読んでみてください。
運動をすると何気に頭が冴えると思いますが、これにはちゃんと根拠があります。
運動をすると心拍数が上がります。
心拍数が上がると言うことは、血液循環が高まるということです。
血液循環が高まることで、脳にエネルギー(酸素とブドウ糖)が回りやすくなります。
すると、脳のコンディションが良くなり、認知・学習・記憶などの機能が高まることが分かっています。
また、運動をすることで脳由来神経栄養因子(BDNF)などの脳細胞を成長させる物質が分泌されます。
脳細胞の成長とは、脳神経のつながりが強化されること、脳細胞の数自体が増えることを指します。
つまり、運動は体のウォーミングアップと成長だけでなく、脳にもウォーミングアップと成長の効果をもたらすということです。
ちなみに、心拍数はドキドキやワクワクと言った感情でも上がります。
スパークでは子どもたちの楽しいという気持ち=ワクワクの感情を引き出します。
もしかするとそれ自体も脳を良いコンディションに保つ秘訣かもしれませんね。
運動をしてイライラが解消されたり、気分がスッキリしたという経験があると思います。
これにもちゃんと理由があります。
運動をするとセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなどの神経伝達物質が放出されます。
こういった神経伝達物質は感情や情動、気分と呼ばれるもののコントロールを担っています。
運動をすることで、これらのバランスが良くなり、気分が落ち着くと言われています。
気分が落ち着けば感情の調整や思考もしやすくなります。
しかも血液循環が良くなって脳は最高の状態です。
スパークではその状態で療育を行なっています。
脳が最高の状態になった中で、スパークでは様々な遊びと大人の積極的な関わりをしています。
ルールのある遊びであったり、体をコントロールする遊び、体を協調させる遊び、指先を使う遊びなど、内容は多岐にわたります。
考えて体を動かす事で脳は発達します。
大人が積極的に関わる療育スタイルは非常に効果の高いものだということが科学的に判明しています。
スパークはそこに運動の効果を上乗せしており、さらなる効果が期待できます。
脳を使いやすい状態にした中で人と関わるというイメージでしょうか。
そして、他者との関わり(やりとり)の中で脳を使うことで、もちろん脳は更なる発達をしていきます。
スパーク運動療育の特別顧問であるハーバード大学医学部精神医学准教授・臨床医であるジョン・レイティ博士の著書「脳を鍛えるには運動しかないー最新科学でわかった脳細胞の増やし方」という本があります。
この本の中にさらに詳しいことが書かれていますので、ご興味のある方はぜひ!
子どもたちが発達していく過程で、自己中心性と脱中心化というキーワードがあります。
幼児期の子どもに見られる認識は自己中心性の傾向が強いとされています。
自己中心性とは、物事が自分にとってどう見えるかという視点から外界を認識するということです。
常に認識の軸がいつも自分にあります。
幼児期の子どもの多くは、「自分と相手では見ている位置が違うから、見える景色も違う」といった認識はまだ難しいです。
例えば「自分がお気にいりのおもちゃでも、相手にとってはお気に入りじゃないかもしれない」といった認識はまだ難しい。
基本的には相手も自分も「同じ」と認識しています。
この自己中心的な段階は全ての子が通る道であり、何ら不自然なことではありません。
ただし、人間社会は人と人との相互関係で成立している複雑なものです。
ある程度で自己中心的な認識から抜け出し、「脱中心化」することが求められます。
相手と自分では見えている世界や考え方などが異なると理解し、自己中心的な認識から抜け出すことを脱中心化と言います。
個人差があれど、おおよそ7歳程度で脱中心化が始まると言われています。
丁度小学校1年生くらいからです。
この脱中心化を促すのは、人と人とのやり取りを通じた人間関係によるものです。
そして、自己中心性の段階が十分に満たされてから、次のステップとして脱中心化が訪れます。
子どもたちは大人や周りの子どもたちとの関わりの中で発達します。
脱中心化もその1つです。
年齢的にも未就学の頃からたくさんの関わりをすることが大切になります。
ところが、発達に特性がある子どもたちは他者との関係を気づくことに困難や不安がありがちです。
そこでスパークでは遊びを通じて、療育士が子どもの楽しい気持ちを引出し、共感し、発達に必要な関わりの場を提供しています。
自閉症をはじめとする発達障害に関する研究はまだまだ発展途上です。
それでも日々新しいことが分かりつつあります。
スパーク運動療育西京極スタジオでは、運動や人との関わりを通じて子どもたちの「脳」の発達を促すことを目的としています。
そこで今回は日本の理化学研究所(通称:理研)が2017年に発表した自閉症と脳に関する研究をご紹介します。
研究のテーマは、
【発達期のセロトニンが自閉症に重要-脳内セロトニンを回復させることで症状が改善-】
というものです。
元の研究紹介リンク→https://www.riken.jp/press/2017/20170622_1/
*研究は自閉症モデルのマウスを使ったものであり、人への応用は今後に期待です。
それでも運動を中心としたスパークの取り組みが自閉症児の脳にポジティブな影響を及ぼす可能性を感じるものでした。
セロトニンは脳や神経の働きに必要な、神経伝達物質のひとつです。セロトニン神経は脳のあらゆるところに存在し、神経と脳の発達の重要な物質として知られています。
セロトニンは社会性行動、攻撃性行動や性行動とも関係性が示唆されていて、少なすぎも多すぎも良くないとされています。
セロトニンは食事から摂取したトリプトファン(アミノ酸の一種。アミノ酸が集まるとタンパク質。)から脳内で作られます。
身近な食べ物はお肉、お魚、卵など。
また、お外で遊んで日光を浴びることや、運動をすることで体内でのセロトニン量が増えると言うことが知られています。
睡眠に重要な役割を持つメラトニンの前駆体(セロトニンはメラトニンの前段階)ですから、安定した睡眠習慣にも関係しています。
この研究で、自閉症モデルのマウスは生後間もない時期から脳内セロトニン量が減少していました。
人間の自閉症者でもセロトニン量が減少していることは以前から言われています。
そこで、自閉症モデルマウスのセロトニン量を増やすためにSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)を生後3日から離乳まで投与しました。
その結果、マウスの脳内セロトニン量が増加し、自閉症マウスに特有の症状も改善しました。
この研究ではセロトニンの量を増やすために、SSRIという薬剤が使われました。
しかし、投薬だけがセロトニンを増やす手段ではありません。
運動をすることも一つの手段であり、大きな効果が期待できる方法です。
先ほども述べましたが、セロトニンはしっかりした食事を摂ること、運動をすることで増え、夜にはメラトニンに変化して良質な睡眠をもたらします。
そう考えると子どもたちにしてあげられることは意外と単純かもしれません(それが結構難しいのですが、、、)。
「しっかり食べて、しっかり遊ぶ、そして眠る。」
この良好なサイクルを作っていくことで、セロトニンが増え、自閉症の特性を少しでも緩和していくことにつながるかもしれません。
スパーク運動療育西京極スタジオでは、運動とやりとりを通じて子どもたちの脳の発達を促しています。
上のサイクルの一つ、「しっかり遊ぶ」へのアプローチです。
Exercise is Medicin =適度な運動は薬 という言葉もあるくらい、運動には高い効果が期待されています。
スパークの療育は一見遊んでいるだけに映るかもしれません。
しかし、体を動かして人と関わるというシンプルなことが子どもたちにとって最も重要なことなのかもしれません。
<この記事の参考文献>
・発達期のセロトニンが自閉症に重要-脳内セロトニンを回復させることで症状が改善- 理化学研究所
https://www.riken.jp/press/2017/20170622_1/
生まれてから大人になるまでの発達には人との関わりが欠かせません。
他者と関係性を築くことで子どもたちは世界観を広げて発達していきます。
生まれたての赤ちゃんは母親や父親をはじめとした身近な大人との関わりが中心。
幼児期からは家族や友達、先生など様々な人との関わりを通じて発達していきます。
発達についての考え方は様々です。
その中に「認識」と「関係」の二軸で発達をとらえるという方法があります。
人間が生きていくためには①世界がどんなものか知る、②世界にはたらきかけていく、という2つの取り組みが必要です。
その取り組みの中で人は発達し、より高度で複雑な社会性を身に付けていきます。
赤ちゃんがいきなり大人の社会で生きていくのは不可能で、そこに至るまでには「認識の発達」と「関係の発達」が必要になります。
認識とは、目や耳から入った情報に意味を見出し概念的に捉えることです。
「目の前に物がある」と知覚することは認知ですが、「それはコップであり、水を飲むものだ」ととらえることが認識です。
「認識の発達」は「関係の発達」を支えています。
人間関係や社会の構造は複雑で多層的です。
人間の社会的な行動に含まれる様々な意味や約束をとらえるには認識の力が必要です。
見たまま、聞こえたままの意味だけではなく、その場の状況や人間関係、声のトーンや表情などさまざまな事を認識して本来の意味をとらえることで、社会との関係性を構築することが出来ます。
一方、「関係の発達」は「認識の発達」を支えています。
人間にとっての世界は、人間同士の社会的な関わりの世界です。
人と関わる中で物事の意味やルールを知り、認識を広げていきます。
認識を発達させるには、単独では不可能で、人と関わる必要があります。
ところが発達に特性のある子どもたちは、何らかの理由で「関係の発達」に困難が生じることがあります。
他者と感覚に違いがあったり、表現が違ったり、発達のスピードに差があったり。
「関係の発達」が進まないと、「認識の発達」も伸ばしにくくなります。
そこでスパーク運動療育西京極スタジオでは、療育士が子どもに積極的に関わることを大切にしています。
子どもたち一人一人のありのままを認め、子どもが楽しいと思える関わり方で、気持ちを引っ張ります。
そうすることで人と関わりたいという気持ちを引出し、人と関わる経験を積むことで「関係の発達」を促しています。
<参考文献>
「子どものための精神医学」 滝川一廣 医学書院 2017
成長段階にある子どもたちは、湧きあがった感情(情動)に対して自分で折り合いをつける事が出来ず、パニック状態になることがあります。
そんな時、大人はどうしても怒ってしまったり、無理やり言うことを聞かせようとしてしまったり。
時間もなければ心の余裕もないのに、気長に丁寧に関わっていられないという方も多いはず。
仕事もあるし、家事もある、兄弟だっている。
なのに言うことを聞いてくれない。
しかし、毎回毎回上手く接することができなくても大丈夫なようです。
子どもがパニックになるような出来事が起こったうち、そのうち30%くらいの頻度で丁寧な関わりが出来ればある程度の効果が期待できるそうです。
30%なので、パニック10回につき3回くらいを最初の目標にされてみてはいかがでしょうか。
今回は自己調整(セルフレギュレーション)という考えに基づいた関わり方を示しておきます。
①パニックになっている(感情が爆発している)子どもに共感する(痛かったね、嫌だったね、やりたかったね、ハグをする など)
→子どもはストレスで脳のキャパがいっぱい。ストレスを減らして理性的なキャパを増やす。
②落ち着きを取り戻したら、理性的な話をする(やりたいけど今は行かないといけないよ 何が嫌だったの? など)
③切り替えを促すような話をする
こういった関わり方は子どもがなかなか遊びをやめない時にも効果的です。
①無理やり遊びをやめさせるのではなく、一緒になって遊び、楽しんでみる
②自分の事を認めてくれた、満足したと子どもが思えば話を聞くモードになりやすい
③一通り楽しんでから「今日はもう帰ろうか」「帰って○○しようか」など切り替えの言葉をかける。
しかしこういった関わりには時間とエネルギーがかかります。
なので毎回のようにできなくても仕方ありません。
先にも述べましたが、まずは30%からだそうです。
パニックの大きさや、その子の発達段階などによっても必要になる時間とエネルギーは変わってきます。
それでも、繰り返すことで獲得していくスキルなので可能な範囲で気長に接することが大事になってきます。
湧きあがる感情に対して自分で折り合いをつける力を育むには、その過程を根気よくサポートする必要があります。
スパーク西京極は基本的に楽しい場でありますが、子ども同士が接する中でストレスが生まれるシーンもあります。
そんな時は逆にチャンスでもあります。
子どもが自分で気持ちを切り替え、適切にその場へ対処していく術を学ぶ機会になるからです。
療育士がサポートをしながらストレスやパニックに対処していきます。
子どもたちの社会性の発達はスキルを獲得するのと似ています。
勝手に身につくわけでも、生まれた時からできるものでもありません。
親との愛着形成をメインとした人間関係の中で育んでいくものと考えられています。
こういった「社会性のスキル」を獲得する根底には自己調整(セルフレギュレーション)と感情の発達があります。
自己調整とは自分の感情に上手く折り合いをつけて、思考や感覚、行動をうまく調整する能力のことを言います。
人生の中で直面する様々な強い情動やストレスに対して、気分を落ち着けたり、注意を適切な方へ向けたりするときに必要になる力です。
*情動=体の動きを伴う急激な感情の動き
自己調整はいきなり身に付く力ではありません。
生まれて成長していく中で少しずつ獲得していきます。
その時に私たち大人ができる関わり方が「共感」です。
共感は嬉しい時や社会的に好ましい行動ができた時だけするものではありません。
ストレスのかかるシーンや感情が爆発してどうしていいか分からない時にも使います。
たとえばビックリして感情が爆発しそうになったシーン。
まずは「嫌だった」「怖かった」という気持ちに寄り添います。
声のトーンや表情、ジェスチャーを最大限使って気を落ち着けます。
少し落ち着いてきたら、「びっくりしたけど、実は怖い物じゃなかったんだ」とか「大丈夫だよ」ということを教えてあげます。
気持ちを落ち着け、理性的に考える過程を一緒に進めてあげることで自己調整をサポートすることが出来ます。
現実的にこういった関わり方を毎回できるわけではありません。
上手くいかないことも多いです。
でもストレスのかかるシーンや感情が爆発するようなシーンは人生で1回きりではありません。
また次以降、気が付いた時だけでもそういった関わり方ができると効果的なようです。
関わる時のポイント
・落ち着いた声のトーンや表情、ジェスチャーをしっかりと使うこと
・子どもを待つこと
・子どもの様子をよく見て、言葉を聞くこと
参考にした記事(英語)
https://www.nichq.org/insight/childrens-social-and-emotional-development-starts-co-regulation
発達に特性のある子たちは「感覚」にも特性を持っている場合があります。
発達に特性のある子たちは、定型発達とされる人たちが何とも思わない感触や音などに対して、ストレスを感じてしまうことがあります。
こういったことを「感覚過敏」と言ったりします。
感覚過敏がなぜ起こるのか、はっきりしたことは研究段階であり、わかっていないことが多いそうです。
ただし、傾向として言えることは、感覚過敏が出やすい状況と出にくい状況があるということです。
感覚過敏が出やすい状況は、脳が「デフォルトモード」にある時だと言われています。
デフォルトモードとは、行動に社会的な意味を持たない状態のことです。
集中力や実行力が低い状況で、頭がぼんやりとしている時です。
特に意味の無い行動をしている時、慣れた動作をしている時がデフォルトモードになりやすいです。
決してデフォルトモードは悪いものではありません。
空想の時間であったり、アイディアが閃く時間でもあります。
アルキメデスの原理で有名なアルキメデス。
原理を発見したのはお風呂に入ってぼんやりとしているときでした。
おそらくデフォルトモードだったと考えられています。
「ユーリカ!(わかったぞ!)」と叫んでお風呂を飛び出したのは有名な話です。
私たちも通勤通学でぼんやり歩いている時に思わぬアイディアが浮かんだりします。
このように、人類の発明や個人のひらめきはある程度デフォルトモードに支えられています。
一方、行動に社会的な意味があって集中力や実行力の高い状態を「タスクモード」と言います。
遊んでいる時、スポーツをしている時、お仕事をしている時などです。
タスクモード時は感覚過敏が出にくいと言われています。
脳が使える資源には限りがあります。
目の前のタスクに資源を割いているから感覚過敏が出にくいのでは?と考えられます。
人間は1日の中でデフォルトモードとタスクモードを切り替えながら生活しています。
ところがデフォルトモードの時間があまりに長いと、行動に社会的な意味がない時間も多くなり、感覚過敏が出る機会も多くなりやすいということになります。
また、脳の機能はタスクモード時の方が発達すると考えられています。
スパーク運動療育では、遊びを通してタスクモードの時間を作り、脳の発達を促しています。
発達していくと、タスクモードとデフォルトモードの切り替えがうまくいくようになっていくとも考えられています。
子どもたちの「やりたい!」「楽しい!」という感情からタスクモードへの切り替えを促します。
スパーク運動療育では子どもたちへの共動・共感を大切にしています。
共感をする理由の一つがストレスを軽減するためです。
発達に特性のある子どもたちは、日常生活において様々なストレスを受けやすい状況にあります。
・表現する方法や反応の違いがあって周囲に理解してもらいにくいストレス
・感覚過敏やアレルギー、身体疾患などのストレス
・園や学校での課題と能力のギャップで生まれるストレス など
特に周囲に理解してもらえないストレスは問題行動として表れることもあります。
ストレスを感じることは精神的にも肉体的にも膨大なエネルギーを使います。
ストレスは様々な疾患、精神疾患の原因となります。
それくらい人間にとって深刻なのがストレスです。
ストレスが強い状態で、自分の気持ちや行動を調整することは発達特性の有無にかかわらず非常に難しいことです。
ストレスがかかる状況では「闘争か逃走か」という反応をつかさどる脳の扁桃体のスイッチが入りやすいです。
扁桃体に行動が支配されると、理性的な行動より本能的な行動が出やすい状況になります。
そこで、スパーク運動療育では、まず共感することでストレスを下げることを大切にしています。
子どもが発した気持ちや言葉、行動に寄り添い、認めることで共感的な関わりをしています。
一見意味のなさそうな何気ない仕草も、療育士達は拾い上げて共感します。
共感はストレスを下げるだけでなく、「じぶんを理解してもらえた」ということで自己肯定感を高めることにもつながります。
自己肯定感は自分の価値をポジティブに認めることが出来る気持ちのことです。
自己肯定感はチャレンジの原動力になります。
このように、まず共感をすることで心を良い状態にします。
そのうえで遊びを通じ様々なやり取りをしていくことで子どもたちの感情を育んでいきます。
ストレスが低い状態であれば、自分の気持ちを整理することや行動を調整することもしやすくなります。
自閉症スペクトラムと言われる子たちは先天的な脳の特性があると言われています。
1つは形質的な違い
もう1つは機能的な違いです。
自閉症スペクトラムのある子たちの脳は「視覚野」につながる脳神経の回線が多いと言われています。
そのため、視覚的な記憶に優れていたり、「物」への興味を持ちやすかったりするそうです。
他にも、左側の側脳室と呼ばれる脳の空間が大きく、頭頂葉が圧迫されることでワーキングメモリが妨害されているという事例も報告されています。
ワーキングメモリが妨害されると、同時に複数の作業や運動をこなすことが苦手になりやすいです。
機能的な特性についても少しずつわかってきたことがあります。
定型発達とされる人たちと比較して、自閉症スペクトラムの人たちは内側前頭前野、後部帯状回といった「社会脳」をつかさどる部分の機能的つながりが弱いということがMRI画像で示唆されました。
これら「社会脳」と言われる脳領域は、自己内省や他者の気持ちを推測するときに使われるとされています。
こういった脳の形質的、機能的な特性は必ずしも悪いものではありません。
ですが現代社会で生きていくときに、苦労や不安があるのは事実です。
そこで必要になるのが療育です。
脳には可塑性(変化する性質)があります。
脳は使うことで変化します。
たとえ先天的な回線が変わらなくても、繰り返し刺激を与えて使うことで迂回路が出来ます。
スパーク運動療育では遊びを通じてたくさん体を動かし、人と関わることで脳をたくさん使います。
特に自閉症スペクトラムの子どもたちにはスパークのような積極的な関わりは効果的です。
その中で少しずつ脳は発達していきます。
少し難しいことを書きましたが、療育での取り組みは明快です。
・遊びの中で体を動かし、人と関わること
・子どもに共感し、ストレスを緩和することで社会脳が発達しやすい状況を作ること
(→ストレスは心身共に膨大なエネルギーを消耗するため)
それを追求したのがスパーク運動療育で提供している「豊かな遊び場」です。
脳科学的なことを踏まえたアプローチは、最終的に子どもの基本である「遊び」に帰結します。
【参考文献】
・Minyoung Jung et al: Default mode network in young male adults with autism spectrum disorder: relationship with autism spectrum traits. Molecular Autism 2014.
子どもたちは、衝動的な行動、問題行動と呼ばれる行動を起こすことがあります。
問題行動は社会的規範などに照らし合わせた時に好ましくない行動を指します。
かつては「問題行動を起こす困った子だ」という認識でしたが、スパークではそのような捉え方をしていません。
問題行動を起こしたくて起こしているのではなく、感情や考えが理解されないストレスとして行動に表れることがあると捉えています。
特に先天的に特性を持っている子どもたちは、そうでない子どもたちとは自身を表現する方法が違ったり、身体的な特徴があったり(感覚過敏等)、与えられる課題と自分の能力のギャップが大きかったりします。
すると様々な面で大きなストレスを受けることになります。
慢性的にストレスや不安を感じることで、衝動的な行動や問題行動といったものが出やすくなってしまいます。
スパークでは遊びを通じて感情を発達させ、情動や行動を自己調整(セルフレギュレーション)できるようアプローチをしています。
子どもたちが遊びの中で表現する動きや表現に共動・共感すること(感情や感覚を共有すること)を第一にしています。
一緒にその遊びや動きをする、褒める、そこからやり取りを広げていくという関わり方をしています。
この関わりを続ける中で子どもたちのストレスの緩和、自己肯定感の高まり、感情の発達を促します。
そして最終的に情動や行動を自己調整する力がついていくことを目指しています。