遊び場(療育)をシェアすることで生まれる現象・効果

スパーク西京極では1時間に3名のお子様まで同時に療育が可能です。

多くの場合は2名が大きな部屋でシェア療育、1名が小さな部屋で個別療育を行います。

お子様一人につき療育士は必ず一人以上担当します。


部屋の間にある扉は、締め切ったり、開けっ放しにしたりします。

開けっ放しにしている時であれば3名、締め切っている時でも2名で遊び場をシェアすることになります。


スパークでは公園のようなイメージで遊び場を提供しています。

子どもそれぞれが療育士と自由に遊ぶ中で別の子の遊びへ興味を持ち、自由に参加していくことが可能です。

実際にそういったシーンも増えてきています。

その時に生まれるやり取りを上手にできなくてもかまいません。

療育士がサポートするので、どんどん関わっていってもらえればと思います。


遊びに加わるだけでなく、おもちゃを取り合うようなシーンも見受けられますが、これは決してネガティブなことではありません。

お子様が他者と関わり、社会性を育むチャンスでもあります。

療育士が一人ずつついていますので、気持ちを代弁したり、味方になったりしてお子様同士の関わり合いをサポートいたします。

その中で少しずつ社会性やセルフコントロールが育まれていきます。


何か遊びをしているときに、別の子がしている遊びに気を取られて注意が逸れてしまうことがあります。

「集中力が切れてしまった」とネガティブに捉えることもできますが、「他者のしていることへ興味を持った」というふうにポジティブに捉えることもできます。

これは社会性を育むうえで重要なことであり、遊び場をシェアするからこそ生まれる現象です。


個別療育でありながらも、その場に別の子も一人か二人いるという環境だからこそできること、生まれる効果があります。


【レビュー論文を紹介】運動がADHDの子の認知機能や特性に与える効果について科学的にわかってきた?

ADHDの子に対する運動の効果が科学的に証明されつつあります。

今回は2019年の現段階で科学的に分かっていることについてまとめられたこちらのレビュー論文の内容を紹介します。

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新しい情報は何かと英語で、なかなか得ることが出来ません。

でも、せっかくスパーク西京極のブログを読んでいただいている皆さんには知ってもらいたいなと思ったので、大事になるポイントを日本語で簡単にまとめてご紹介します。


【大まかな内容】

・ADHDの子が運動をするとどんなメリットがあるのか?

・脳が発達するメカニズムは?

・どんな運動をすればいいのか?

・科学的に推奨される運動の内容は?


スタジオでの取り組みを交えながら、ご紹介します。


ADHDの子が運動をするとどんなメリットがあるのか?

そもそも特性の有無に関係無く運動をするだけで、生理学的、心理学的、認知神経科学的な好影響がたくさんあります。

 

・ストレス、不安、うつ状態などネガティブな感情の緩和

・実行機能や記憶力の向上を含む認知機能面に対するポジティブな効果→脳機能へ効果

・一過性の運動では脳波の状態が改善&脳に回る酸素の量が上昇する→脳が覚醒し頭が冴える

・脳由来神経栄養因子:BDNFが大脳皮質や海馬で増加→脳の発達

・灰白質、白質といった脳の神経組織の発達を促進

これら全て科学的に証明が進みつつあります。

もちろん科学は全てを説明しませんし、諸説ある状態は続きますが、運動にこういった効果がある事はほぼ間違いないとされてきています。


ADHD特性を持った子に対する運動効果は、まだ「断言」する域には達していませんが、研究は進み、たくさんのことが分かってきています。

先に紹介した生理学的、心理学的、認知神経科学的な効果はADHDの子たちが持つ特性傾向にも関係しており、好影響を与えます。

 

特に認知機能の中でも重要な役割を果たす実行機能を運動は改善します。

実行機能は課題を遂行するにあたって思考や行動をコントロールするシステムのことです。

 

(*注:実行機能にはワーキングメモリ、注意のコントロール、抑制のコントロール、認知のコントロール、認知の柔軟性などが含まれます。私たちは普段何気ない行動でも、こういったことを瞬時に処理して生活しています。ところがADH傾向のある人の場合、これらの機能を使うことが少々苦手であると言われています。)

 

運動による実行機能の発達と、運動から得られるその他様々なメリットが合わさることで、衝動性、注意欠陥、多動といった特性を自分で調整することに対して効果があると科学的に証明され始めています。

 

ではどうして運動は効果があるのか。

そして、どれくらい運動すれば良いのでしょうか。


一過性の運動でも効果はあり

一過性の運動(例えばスパークに1回来る)でも一定の効果が認められています。

特性の有無に関わらず、運動をした後は実行機能を推察するテストの結果が良くなる傾向にあるということが分かっています。

 

これは一度の運動で脳が劇的に発達したからではなく、先ほど紹介したネガティブな感情の緩和や脳波の状態、脳の酸素状態が良くなること等に由来していると考えられています。

つまり、実行機能はADHの特性と関係していると言われているので、運動をすることで、一時的に特性の自己調整がしやすくなる可能性があります。

 

確かにスパークで療育をしている最中は問題行動が減ったり、普段できない事ができたりするというシーンを時折見かけます。


ただし、こういった一過性の運動による効果はその時だけのもので、しばらく時間が経てばもとに戻るとされています。

 

では意味が無いのでは?と思われるかもしれませんが、そうではありません。

この一過性の効果でも、何度も何度も蓄積することで良い影響が期待できます。
その証拠に、継続して長期間運動をした場合の方が、一過性の運動よりも大きな効果が科学的に認められています。


継続して運動したほうが効果は高い!

一過性の運動より、長期的に運動を継続した方がADHDの子に対しても、定型発達の子に対しても実行機能や特性に大きな効果が出やすいということが分かっています。

 ではどういった運動を継続していけば良いのでしょうか?



有酸素運動は効果的だった!?

一番ではありませんが、最も手ごろで、科学的にも効果が認められているのは有酸素運動です

まだまだ研究段階ではありますが、様々なことが分かってきています。、

心肺機能の高いADHD児の方が、そうでないADHD児よりも抑制制御機能を測るテストスコアが高いようです。

他にも、被験者数が少ないですが、身体活動量と実行機能のテスト結果に相関関係があるというデータもあります。

有酸素運動が良い!!と言っても無理にマラソンなどをさせる必要はありません。

たくさん走り回れるような遊び、

登山や川など自然と心肺機能を鍛えることができる遊び、

できるだけ楽しく息が弾むような遊びに連れ出してあげることが大切です。

それで有酸素運動になります。

 

運動の強度(激しさ)は軽く息が弾む程度で構いません。

アスリートほど心拍数を高めた過酷な運動じゃなくて大丈夫です。

ウォーキングからジョギング程度の強度で効果は認められています。

 

スパーク西京極に来て下さった時に療育士たちとキャーキャー言いながら楽しく遊んでいます。

あの時の運動レベルで科学的にもOKなんです。

そして、キャーキャー楽しく遊んでいる、それだけでも脳に大きな効果が期待できると科学的裏付けがされ始めているのです。



他にはどんな運動が良い?

有酸素運動以外でも運動の効果は認められています。

最も効果が高いのは、様々な運動に長期間取り組んだ場合です。

「子どもが様々な運動に取り組む」、これぞまさに「自由な遊び」の出番であり、遊びがいかに重要かを物語っています。

特定の運動ばかりを無理矢理させる環境では、様々な運動に触れることはできません。

遊びという自由さがあるからこそ、子ども自身が自ら進んで、楽しく、様々な運動に取り組めるのです。

 

ちなみに、有酸素運動よりも、コーディネーションを必要とする運動(投げたり蹴ったり登ったり)、スポーツ活動などの方が実行機能向上への効果が大きいという研究もあります。

もちろん、スパーク西京極では遊びを通じてこういったコーディネーションを必要とする運動なども行っています。



最も良くないのは、非活動的な習慣を送っている場合かもしれません。

そもそも定型発達児よりもADHD児の方が身体活動量の推奨レベルを満たしていない可能性が高いようです。

そうなると認知機能や特性による困難さに加えて、肥満や生活習慣病のリスクまで高めてしまいます。


何分くらい、どれくらいの激しさで運動をする?

それではこういった運動(遊び)はどれくらい行えばよいのでしょうか。

まず時間ですが、1回あたり10分以下の運動では効果が出にくく、11分以上からがターニングポイントになるようです。

数々の研究をメタ分析した結果では20~30分の運動で効果が出る可能性があるとされています。

 

ですから療育では最低でも15~20分はたくさん動き回る遊びをしたいなと考えています。

(☆もちろん強制はしませんし、それ以上の時間も大歓迎です。

90分の運動を5週間続けたら大きな効果が出たという研究もあります。)

 

スパーク西京極での療育は1回あたり60分ですので時間は十分にあります。

脳のコンディションを良くする意味も込めると、できるだけ序盤に走り回ったりできるとベストです。


次に運動(遊び)の強度です。

低~中強度=最大心拍数(脈拍)の40~75%で効果が認められています。

スパーク西京極に来てくれる未就学児(5歳)であれば、1分間に86拍~161拍程度です。

ちょっと走り回ったり、何回もジャンプしたりするだけで十分に到達できる範囲です。

 

もちろんもっと高い強度でも効果はありますが、継続できなくては意味がありません。

 

効果が出始める継続期間ですが、こればかりは個人差が最も大きいのではないでしょうか。

それを踏まえた上で言うと、最短でも5~10週間はかかります。

効果の大きさも、大きなものか小さなものか、これも個人差が大きく、断言できるものではありません。

 

それでも根気よく運動(遊び)はたくさん続けていただきたく思います。

運動をすること、遊ぶことで発達に対してメリットが出る可能性は合っても、デメリットが出る可能性は極めて低いですから。


なぜ運動で脳の発達に効果が出るの? 

脳の発達に効果が出る理由についても研究が進んでいます。

まずは1回の運動をすることで脳に起こる現象からご紹介します。


脳波には数種類ありますが、集中や注意に関係するのがβ(ベータ)波、寝る時(不活動時)の脳波がΘ(シータ)波です。

運動をすることで、β派が有意になり、脳が覚醒します。

また、運動をするとリラックスを司るα波も高まると言われています。

すると、脳が覚醒しつつも(起きつつも)、リラックスした状態になります。

それと並行して血流が促進され、脳に行き渡る酸素量も増加します。

注意力やその他の実行機能を最大限に使えるコンディションができあがります。


こういった最高の状態で、遊びの中で脳を最大限使い、自己調整する、できた、という経験の繰り返しが長期的な発達に繋がります。

 

また、運動をした後には脳由来神経栄養因子:BDNFが脳の皮質、海馬で発現することが分かっています。

BDNFは脳の神経細胞を成長させる役割があります。

運動を継続し、BDNFを繰り返し発現させることで脳の発達が促されると考えられています。



長期的に運動を継続することで脳に起こる変化も科学的に証明が進んでいます。

特に前頭前野、線条体、前頭頭頂皮質、中脳皮質などのADHD児が定型発達児とは異なった発達やネットワークを見せる部位に対して効果があると分かってきました。

そういった部位の神経組織の発達を促すことが運動によって可能であると証明されてきています。

衝動性や多動、注意欠陥といった特性は必ずしも悪いものではなく、それを自分で制御する能力が求められます。

そこに対して運動が効果的であるという科学的な裏付けになります。


スパーク西京極での取り組み

今回紹介したレビュー論文はスパーク西京極での取り組みを科学的に裏付けるものになりました。

60分ある療育時間の中で、基本的には動き回るので、有酸素運動の効果が出る条件は満たしています。

他にもボールや大きなおもちゃ、自分や療育士の体を使ってコーディネーションを必要とする運動もたくさん行なっています。

 

加えて、スパークでは子ども自らが「やりたい!」と思った感情を大切にしています。

どんなに素晴らしい効果が期待される運動でも、「やりたい!」という感情、「楽しい」という感情、リラックスできる環境が無ければ脳に良い刺激は入らないと言われています。

 

スパーク西京極では、科学的に効果が証明されつつある運動に、感情へのアプローチを組み合わせた療育をしています。


<このブログ記事の参考文献&画像引用>

・Lasse Christiansen et al: Efects of Exercise on Cognitive Performance in Children and Adolescents with ADHD: Potential Mechanisms and Evidence-based Recommendations. J. Clin. Med. 2019, 8, 841.

スタジオでいつも裸足で遊んでもらう理由

スパーク西京極ではスタジオに来てもらうとすぐに、「靴下脱ごうか!」とスタッフが声をかけます。

毎度の事なので、お父さんお母さんも「靴下脱ぎや~」と真っ先に子どもに声掛けしていただくことも増えました。


では、なぜ靴下を脱いで裸足で遊ぶのか。

それは子どもの発達に必要な、ちゃんとした理由があります。

ご存知でしょうか?


子どもたちには

「滑ってこけちゃうからね~」と言っていますが、、、。


まぁ、それも理由の一つですが、もっと大切なことがあります。


足の機能と感覚のためです。

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人間の骨格は本来、裸足で歩くのに最適な構造をしています。

ところが近年、裸足で活動する機会がめっきり減ってきました。

さらに、最近は靴のソールの機能が上がりすぎて足へのサポートが無駄に手厚くなってきました。


するとどうなるか。

自分の筋肉で足をフルに使うこと、地面の刺激を感じることが減ります。

それが続くと、偏平足やO脚、X脚など足回りのトラブルを生みます。

偏平足は土踏まずがつぶれて足裏が全部地面についている状態です。

衝撃吸収能力が弱くなるので、どたどた歩きが分かりやすい特徴です。

これらはすべて全身の運動機能の低下にも関係します。


とは言っても4歳くらいまではほとんどの子が偏平足です。土踏まずは6歳くらいから完成してきます。焦らずに。

でも使わないと発達していかないので、裸足で遊んでもらいます。

裸足でしっかり踏ん張る、地面をつかむことで足回りの筋肉をしっかりと使います。

靴下を履いていては足の指が自由でないため、この機能を最大限使えません。


地面の凸凹などの状況を感じる触覚が鈍いと足は上手に使えません。

なので、裸足になることでその感覚をしっかりと刺激する目的もあります。

靴下をはいている状態は靴をはいている状態よりは良いですが、布が一枚ある分、感覚は鈍くなります。


足の使い方が下手、感覚が鈍いと、膝、股関節、体幹も上手く使えず姿勢の維持にも影響が出ます。

そして姿勢ができていないのはあらゆる運動機能に影響します。


スタジオでは遊びの中で様々な物を踏んだり登ったりするので、足裏からしっかり刺激を入れ、足の指を自由にした状態で足の機能をいっぱい使ってもらいたいと思います。

週1~3回、時間にして数時間の小さなことかもしれませんが、将来的な偏平足の予防、体幹をうまく使えるようになること、運動機能の向上などにつながればと思います。


わたくしブログ担当、子どもがマットなどによじ登っているとき、足の指がパーッと開いて地面をつかんでいると「よしよし」と心の中で思っています。



よくこける・ぶつかるのは体幹や固有感覚の弱さ?注意力の低さ?

スタジオに来て下さる子ども達の中には、よくこける・ぶつかるといった不安を持つ子どもたちがいます。

よくこける・ぶつかる原因として主に考えられているのが、、、、


1.体幹が弱い

2.固有感覚・平衡感覚が弱いことから来るボディーイメージの弱さ

3・注意欠陥


子どもによっては3つとも抱えている場合もあります。

というのも、上記の3つともつながっているので、どれか原因かを明らかにするのはなかなか難しいと思います。

人間の体は1つ1つの機能がばらばらに働いているわけではありません。

全部つながっています。

そこには心や精神、感情と呼ばれる事柄もつながっています。


注意が向いていなければ感覚にスイッチは入りにくいですし、注意や感覚のスイッチが入っていなければ体幹の機能もONになりにくいです。

3つとも十分に機能する能力があっても「気持ち」「感情」が無ければ最大限機能しません。

「心身ともに」とはよく言ったものです。


こける原因となる要素のおさらい

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それでも我々大人としては明確な答えがあったほうが、なんだかほっとするし、取り組みもしやすいですよね。

というわけで、前章で書いたことを前提として、こける原因を考えていきます。

まずは1つ1つの要素のおさらいです。

体幹の弱さには2種類

体幹が弱いと言っても、2種類あります。

そもそも筋力が低くて、姿勢の変化に耐えれない

②必要に応じて力を入れ、体を安定させるという使い方・機能的な弱さ

平衡感覚・固有感覚の弱さとボディーイメージ

平衡感覚は「重力や加速度を感じるセンサー」です。

体の傾き具合やそのスピードを感知し、バランス・姿勢を保つために必要です。

固有感覚は、自分の筋肉の張り具合や骨の位置関係、関節がどれくらい動いているのかなどを感知するシステムです。

固有感覚は平衡感覚と連動し、姿勢を安定させることに貢献しています。


そして平衡感覚、固有感覚、触覚の3つを使って、自分の体のサイズや輪郭、パーソナルスペースを認識する「ボディーイメージ」が形成されます。

よくぶつかるというのはボディーイメージの弱さからくることが考えられています。

しかし、基本的なボディーイメージは6歳ころに形成されるようなので、未就学のお子様では今後の伸びしろを残しています。


注意欠陥

注意欠陥は特性としてもよく知られています。

足元や前方に注意が行かず、こけたりぶつかったりしやすくなるとされています。


よくこける・ぶつかる原因を考えてみる

こちらも最初に述べたことを前提にお読みください。

もし注意欠陥でもないのによくこける、ぶつかるのであれば、体幹や感覚の弱さが考えられます。


もしくは、その活動に興味が無く集中できない=気が入っていないというのもあります。

気分や感情も関係しています。

(余談ですが、、、

本当に体幹が弱い場合もありますが、長時間椅子に座ってられないのは、活動や先生の話が著しくつまらないというのも無きにしも非ずです。なんでも体幹のせいにはできません。大人はつまらない講演会で席を立てます。でも子どもたちは、学校や園ではそうはいきませんから、、、。)


では、体幹や感覚に弱さが無いのにこけたりぶつかったりするのであれば、それは注意を向けるのが苦手なのかもしれません。

その場合どうやって体幹や感覚に弱さが無いのと推察するのか。

それは、子どもが好きな遊び、集中している遊びをしているときの様子を観察してみてください。

その時は咄嗟のバランスも良くとるし、人や物にもぶつかりにくい、こけないのであれば体幹が弱いとは言い難いかもしれません。


スタジオでの取り組み

楽しくたくさん体を動かして遊んでもらいます。

これに尽きます。

感覚や機能と言うものは、これでもかってくらい何度も何度も使うことで鍛えられます。

大人が思っているよりも、しつこく長くです。


スパークでは感情を育てることを第一に考えています。

「もっとやってみよう」「今これに集中しよう」「できるまで頑張ってみよう」といった感情に療育士がはたらきかけていきます。

感情はすべての根っこです。

遊びの中で感情が高まれば、体の機能や感覚を最大限使う、発達させる土台ができます。

その状態でたくさん一緒に遊びましょう!

感覚や機能を、これでもかってくらい何度も何度も使うコンディションが整います。


一応スパークでは他者と関わる楽しさ、社会性などを発達させることが先です。

その中で今日紹介したような体の機能が発達すれば幸いです。


スタジオでの遊び④:寄り添い

スタジオでの遊び紹介、今回は「寄り添い」です。

寄り添いは遊びというより、子どもたちとの向き合い方と思って頂いた方が分かりやすいかもしれません。


子どもたちは色んなものへ興味を示し、寄り道をする

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スタジオにはたくさんの遊び道具、壁のテープアート、ラミネートなど、子どもたちが興味を示すものであふれかえっています。

何かの遊びをしているときでも視界に入ったものに心奪われ、遊びを中断してそちらに行くことも多々あります。

療育士達はそんな子どもたちの「寄り道」を否定するのではなく、認め、一緒に興味を持つことで寄り添っています。


寄り添う中で新しく遊びが展開されていったり、最終的にもとの遊びに戻ってきたりします。

もちろん、寄り添いながらコミュニケーションをとることで他者と関わって遊ぶ楽しみを感じてもらおうという意図もあります。

これは非常に意味のあることです。

取り組むことに寄り添う

スパークでは療育士が子どもの興味を引くように遊びを展開し、誘っていくことをしていますが、そればかりではありません。

子どもが見つけたもの、取り組み始めたものに一緒になって取り組みます。

運動療育なので基本的には体を動かす遊びをしているわけですが、もし子供がおままごとを初めても、まずは寄り添います。

運動でなくても他者と遊ぶ事は前述したとおり非常に意味のあることです。

運動する時間が減る!と悲観されるのではなく、それはそれで大切なんだなと思って頂けると幸いです。


療育士は寄り添って子どもとコミュニケーションを取りながら、次の遊びを展開し、誘うタイミングを待っています。


スタジオでの遊び:③力のコントロール

スタジオでの遊びについての紹介、3回目になりました。


今回は力加減のコントロールを必要とする遊びについてです。


力をコントロールすることが苦手な子たち

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力が強いこと自体は悪いことではありません。

困るのは、力加減を必要に応じてうまく調節できないことにあります。

スタジオに来て下さる子たちの中にも、力のコントロールが苦手な子たちがいます。


何をするときも思いっきり力を入れてしまう。

優しく投げる、蹴るが苦手で、常に全力。


生きていくうえでは思いっきり力を込めるだけではなく、そーっと力を入れたり、優しく触ったり、弱い力で投げたり、置いたり、軽くやっておく、肩の力を抜いてリラックスして取り組むなど、場面や使う物に応じて力加減を調整する必要があります。


力加減のコントロールにつながっている遊び

スパークでは強制的に何かをさせることはありません。

遊びに対して「やりたい!」と思って初めて遊びが成立します。


<力加減のコントロールにつながっている遊びの例>


・的を狙ってボールや物を投げる

→思いっきり投げるだけでは当たらない、入らない


・強弱をつけてボールを蹴る、投げる、転がすなど

→強く蹴ったり、優しく蹴ったり 強弱の中で力加減を知る


・不安定な場所を渡る

→全力で走るだけでは落ちてしまうので気を付けながらそーっと渡る


・ごっこ遊び・見立て遊びの中で

→ごっこ遊び・見立て遊びの中では様々なシーンが現れます。

音を立てないようそーっと相手に近づくこともあれば、思いっきり大きな音でビックリさせることもあったり。


スタジオでは療育士がお子様につきながら適宜声をかけながら力のコントロールを促しています。

「そーっとだよ」「つよく!」と言ったり、声のトーンや擬音語で表現したり。



スパーク西京極での取り組み方

子ども一人一人が興味を持った遊びの中で、力のコントロールが身に付くよう遊びを展開しています。

その中で療育士・親御さんは子どもに共感し、褒めることで「できた!もっとやりたい!」という気持ちを引出します。

これは心理学的には「正の強化」と言います。

脳科学的にはドーパミンという快感情を引き起こすホルモンの分泌を高めることにつながり、脳の発達に貢献します。


*「正の強化」=何か(ご褒美)を与えて行動をもっとやりたいと思わせること。できたらお菓子をあげるなどがこれにあたる。


スパークでは人と人との関わり合いを大切にしているので、共感すること、褒めること、認められることなど、人間関係から生まれる喜びが行動を促進するきっかけになります。

さらに、「できた!もっとやりたい!」という気持ちは自己肯定感を高めていき、さらなるチャレンジを促します。


スパークでは力のコントロールを身に付ける遊びをする中で、人と関わる楽しさを知ることや自己肯定感を高めること、脳の活動を促すことなど、様々な面からアプローチしていくことで、子どもたちの発達に働きかけています。


記事紹介:遊びの有効性が科学的にわかってきた?!

スパークでおこなっている療育は「豊かな遊び場づくり」です。


遊びこそが子どもにとって最高の学習ツールだったということが科学的に証明されてきているようです。

これは療育にも通じることであり、スタジオで行っていることの科学的裏付けにもなります。

詳しい記事があるので、紹介しておきます。下記URLからどうぞ!


科学的に正しい子どもの教育――最高の学習ツールは〇〇〇だった! こどもまなびラボ

https://kodomo-manabi-labo.net/big-date



スタジオでの遊び②:協調運動

前回に続き、スタジオで展開される遊びが子どもたちの発達にどう影響しているか、どんな能力が鍛えられるかをご紹介します。

今回は「協調運動」です。


遊びをする上での前提は前回の内容と同じです。

その遊びの中で自然と協調運動になることに取り組んでもらいます。

本人がやりたいと思う感情を大切にしています。

感情に働きかける、他者と遊び共感する、体をたくさん動かす、それらが組み合わさって心が育まれることで発達が促されます。


協調運動とは?

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協調運動とは同時に複数の動作を1つにまとめて行うことです。


身近な例でいうと、

・ハサミでものを切る(物を持つ手とハサミを動かす手が別々の動き)

・お茶碗を持ってお箸でご飯を食べる

・縄跳び(縄を回しながらタイミングよく跳ぶ)

・ジャングルジムを登る、降りる

・ボールを投げる(足の踏み出し、体の回転、ボールを離す)

・ピアノ(左右の手がばらばらの動き、足も使う)


協調運動がなぜ大切か?

日常生活や運動面で不器用さのある子の場合、協調運動が苦手な場合があります。

そこへのアプローチとして、療育では遊びの中で自然と協調運動ができるように遊びを展開しています。


スタジオでよく見られる遊びの例


・登る(布で壁登り、マットの山登り療育士の体登りなど)

→上手く手足を動かしながら、次の手足の置き場を見て考えて動く。適切なタイミングで適切な部位の力を入れる。


・くぐる

→適切なサイズに体をたたみながら、手足を動かして進む。


・キッズステップを渡る、渡りながらボールをキャッチしたり運んだり etc...


・ボール遊び

→全身をタイミングよく上手く使わないとボールは遠くに飛ばない、蹴れない、狙ったところに飛ばない

協調運動の先に目指すもの

協調運動は日常生活で起こりうる不器用さを改善していくために取り入れています。

そして、協調運動が十分にできるようになってきたらスパークではさらに次の段階を目指しています。

それは、リズム良く動くことです。


リズムと言うと、音楽に合わせて運動すること?と思われがちですが、それだけではありません。

確かに音楽に合わせて運動をすることは、体のリズムを養う為に有効な手段の1つではあります。


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リズム良く運動するとは一定のタイミング、リズムで動き続けることです。

歩行をイメージしていただくと、ずっと一定のリズムで体を動かしていることが分かると思います。

リズムを変える(速くする)と早歩き→走行になります。


音楽に合わせて体を動かすのも、4拍子なら4拍子という一定のリズムで体を動かし続けることになります。

音楽という外からの客観的な基準がある分、リズムを整えやすいです。


音楽を伴わない様々な運動・遊び・スポーツも自分の内部で感じられるリズムを刻んでいくことで高度なものになっていきます。

体を動かす時のリズムを自然と刻めるようになるには、何度も何度もたくさん体を動かしていくことが何よりです。


縄跳びであれば、同じリズムで何回も続けて跳べること。

むしろリズムがばらばらだと何回も続けて跳べませんね。


子どもたちは本来、たくさん遊ぶ中で体のリズムを養っていくものです。

スパークでは、感情やセルフレギュレーション能力、社会性の発達に働きかけるとともに、自然と身体能力にもプラスになるような豊かな遊び場を作りに努めています。


スタジオでの遊び①:有酸素運動

スパーク運動療育では様々な種類の遊びを行います。

子どもが興味を持って取り組み始める、療育士が仕掛ける、別の子がしている遊びに加わるなど始まり方は様々ですが、それぞれの遊びには狙いがあります。


*「狙い」と言ってしまうと、療育士が仕掛けた以外の遊びは無駄というふうに捉えられてしまうかもしれませんが、そういうわけではありません。自然に成立する遊びすべてに子どもの成長に必要な意味があります。


子どもの時期にはいろいろな種類、環境で遊ぶことが重要です。

というのも、遊びの種類によってメインで使う機能、体への効果、鍛えられる能力、発達への影響が異なるからです。

スパークはその遊び場を提供することで発達を促すことを目的としています。


そこで、スパークでおこなっているそれぞれの遊びの中で自然と鍛えられている能力、得られる効果を遊びごとに分類し、何回かに分けてご紹介していこうと思います。

(本来はきっちり分類できないのが遊びです。)


今日は有酸素運動を取り上げていきます。


有酸素運動になる遊びって?

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鬼ごっこ、ラミネート集め、追いかけっこ、かけっこなどが有酸素運動にあてはまります。

イメージとしてはちゃっちゃか走り回る、動き回ることで、脈と呼吸が上がる運動です。

遊び内容は本人が創造したものや、療育士やシェアしている子の遊びに加わったりと様々です。

ただし強制して何かをさせるわけではなく、子どもの創造性と「やりたい」という感情から自発的に始めた遊びをしています。



なぜ有酸素運動をするか

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ではなぜ有酸素運動をするか。

それは遊びを通した社会性・感情の発達に加え、血流を促進して脳のコンディションを良くするためです。


脳のコンディションが良くなる

私たち大人も気分が乗らないときや、めんどくさい時に少し体を動かすとシャキッとしたり目が覚めたりするときの感覚です。

脳は神経細胞の集まりです。

神経細胞は酸素と糖質をエネルギーとしています。

血流が良くなると酸素と糖質が脳に活発に運ばれ、コンディションが良くなります(脳の活性化とか頭が冴えると言われる)。

その他にもホルモン状態の変化を伴ったりして私たちの脳と体は活動的になります。


遊びを通じた発達

また、様々な体を使った遊びや活動をして脳を使うことで神経の伝達経路に働きかけることが出来ます。

体を動かすこと、考えること、すべての行動は脳から神経を通じて体に指令を出すことです。

これが脳(神経細胞の集まり)を鍛えることであり、発達が促されることにつながります。


それに加えて他者と一緒に活動することで社会性にも働きかけることが出来ます。


人間は生きていくために体を動かし、考え、他者と関わらなければいけません。

それを通じて心身共に成長していく仕組みになっています。

療育ではそれができる「良い遊び場」の提供をしています。


有酸素運動に分類されるような遊びもその一環です。


有酸素運動が脳へもたらす恩恵

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もう少し科学的に掘り下げてみます。

有酸素運動をすることで様々なホルモン・神経伝達物質が脳や身体器官から分泌されることが何年も前から科学的に証明されています。

ホルモンや神経伝達物質は私たちの脳と体に働きかけ、気分の落ち着きや高揚、リラックス、多幸感など「感情」のコントロールに関係しています。


・ドーパミン(快感情)

・アドレナリン(高揚感)

・セロトニン(落ち着き、リラックス)

・エンドルフィン(多幸感)

など


行動には「感情」が先立ちます。

「感情」に働きかけることはすべての行動の根底に働きかけることです。

そういった意味で、感情に働きかけてくれる有酸素運動は効果的なものであると考えています。


また、有酸素運動をすることで脳由来神経成長因子(BDNF)という物質が分泌されることが明らかになってきています。

BDNFは脳細胞、脳の血管の成長を促す物質です。

これも遊びが脳を鍛えることになる理由の一つです。

体を動かし、考え、感情を出す、すべて神経・脳を通じて行われます。

たくさん使うことで人は発達します。


何よりも大切なこと

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先述しましたが、行動には感情が先立ちます。

「やりたい」「面白そう」と思うからこそ活動取り組めますし、「楽しい」「もっと!」と思うからこそ継続ができます。

だからこそ遊びは子どもの自発的なもの(創った、興味をもった)に療育士が一緒になって遊ぶスタンスをとっています。

いくら発達に良いからと言っても、強制的に何かさせることは感情を伴わないので基本的には行いません。


なので、「有酸素運動をさせている」ではなく、「結果的に有酸素運動の色が強い遊びになった。その中で発達が促されている」というイメージでしょうか。

有酸素運動に分類される以外の遊びでも同じです。

そして、どちらかというとスパークでは遊びを通じた社会性や感情の発達にも重きを置いています。

遊びの内容も大切ですが、それが何よりも重要という位置づけではありません。

特性を考えてみる

スタジオには様々な特性を持った子どもたちが来てくれています。

自閉傾向のある子、注意欠陥・多動の傾向がある子、発達がゆっくりの子、不器用さや力加減が苦手な子などなど。


1人1人の特性を理解するのはなかなか簡単なことではないかもしれません。

ですが、今回は少しでも特性を理解する助けになればと、1つの考え方をご紹介します。


特性の重複と程度

特性と言われるものは、多かれ少なかれ重複します。

1つの特性が突出している子(他の特性は程度が弱い)もいれば、複数が重複している(いずれも強く出ている)子もいます。

定型発達と言われる人であっても、こだわりがあったり、衝動的な一面があったりと特性は「重複して存在」はしています。


ですが定型発達と言われる人は多くの場合、そのこだわりや衝動性などの特性が日常生活に支障をきたすほどではありません。

個性的な人、変わり者と言われる人は、ある特性が強く出ているけれど、支障は出ない程度、もしくは問題にならない環境にいたりします。


発達に難があると言われる子たちは、そういった特性が現代の日常生活・社会生活において支障をきたす、もしくはきたしかねないほどに強いと言われています。

つまり、特性は多かれ少なかれ重複し、それぞれの程度に差があると言えます。


発達に難がある子は、それに加えて運動面の不器用さ(DCD)や発達スピードがゆっくりだったりと様々です。


また、自閉傾向の強い子が場所によってそわそわし始めて、ADH的な振る舞いが出ることもあります。

逆に、ADH傾向の子が、ある特定のことに興味を持ち、ずっとそれをしている、いわゆる「過集中」に入ることもあります。

過集中だと一見、自閉特性ではないかと感じることがありますが、普段はADH傾向が強く、何が何だか分からなくなることも。


さらに、複数の特性が強くて普段はお互いを打ち消してしまっており、ふとした時に困りごとが出てくるパターンもあります。


このように、特性の出方は人それぞれであり、複雑です。


特性を理解するために

こういった中で一人一人の特性を理解するために、XYのグラフで考える方法があります(*1)。


縦軸がAS(自閉傾向)、横軸がADH(注意欠陥・多動傾向)とします。

ASが強いほど縦に、ADHが強いほど横にいきます。

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(グラフは本田秀夫 2018を参考にしました)


はどちらも強く重複。

はASが強いが、ADHはわずかで、ASに関してはASD(自閉”症”)と言われるレベル。

はADHが強いが、ASはわずかで、ADHはADHD(注意欠陥・多動”症”)と言われるレベル。

はASDともADHDとも言い切れませんが、どちらの特性もある程度強く、様々な場面で困りごとが出ます。

はいずれの特性も、あるもののわずかで、いわゆる定型発達。

はやや自閉傾向が強いものの、生活に支障が出ないレベルであったり、環境的に問題が無いちょっと個性的な人。


皆さんのお子様の場合はどのあたりに該当するでしょうか?


このグラフに加えて、運動面の不器用さや発達のスピードなども並行して考えてみると、少し特性について理解がしやすくなります。

そのうえで環境を調整したり、接し方を考えていくことが大切になってきます。



ざーっとしか説明することができませんでしたが、何かのお役に立てれば幸いです。


より詳しい内容や正確なグラフ等は、参考にした書籍から学ぶことができます。


<このブログ記事を作成するにあたって、参考にした文献>

本田秀夫: 発達障害 生きづらさを抱える少数派の「種族」たち SBクリエイティブ 2018年

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