現代の子たちは一昔前の子たちと比べると、「さんま」が減っていると言われています。
秋刀魚ではありません。
「三間(さんま)」です。
(造語です。)
秋刀魚の漁獲量が減っていることも問題ですが、子どもにとっては三間(さんま)の減少も深刻です。
三間は子どもの遊びに必要な、「空間」・「時間」・「仲間」の3つの「間」のことを言います。
「遊びのさんま」が満たされた環境でたくさん遊ぶことで子どもたちは発達していきます。
ところが、一昔前のような自由に思いっきり遊べる「空間」が減っています。
公園は数が減るし、空き地やガレージで遊ぶと今は厳しく怒られます。
公園があっても、いつの間にかボール遊びが禁止になっていたりして、激しく遊べなくなっています。
時間の減少も進んでいます。
最近の子たちは多忙です。
園や学校が終わると毎日のように習い事がある子たも少なくありません。
もちろんスポーツや芸術を習うことは、身体機能を向上させ、豊かな感性育むことに大きく貢献します。
しかし、ある程度形式が決まった中で先生に教えてもらう「習い事」と、子ども同士が自由に展開する「遊び」では本質的に異なります。
どちらが優れているとかではなく、どちらも大切です。
たとえ子ども自身が習い事をしていなくても、保護者が家事や仕事で忙しければ時間は減ります。
共働きの家庭も多くなってきているため、仕方ない部分も大きいです。
たとえ時間と空間があっても、「仲間」がいなければ「遊びのさんま」を満たすことはできません。
出生数が年々減少傾向にある日本ですので、子どもの絶対数が減っていることは言うまでもありません。
2019年はついに年間90万人を割ってしまい、過去最少となったそうです。
ここまではすべての子どもたちに共通して言えることです。
では特性のある子たちはどうでしょうか。
特性のある子たちの中にはコミュニケーションに不安があったり、他の子たちと比べてできないことが多かったり、発達のスピードが違ったりします。
すると、子ども同士の輪に入ることが難しくなることがあります。
これでは時間と空間が整っていたとしても「仲間」の条件が満たされていないのと同じです。
同じ時間と空間にいても、独りになりがちです。
子どもは遊びを通じて発達します。
子ども同士で遊ぶ中で生まれる様々なやり取り、感情、運動、イメージなどはすべて発達に必要な刺激です。
ところが、特性があって「仲間」に入りたくても入れない状況では、こういった刺激に触れる機会が少なくなりがちです。
スパーク運動療育西京極スタジオでは、思いっきり体を動かせる「空間」と「時間」があります。
(さすがに公園ほどではありませんし1時間だけですが)
その中で、「仲間」である療育士とたくさん遊び、社会性や感情、運動機能等の発達を促します。
また、スタジオで療育士と遊ぶことは将来的に実際の子ども同士で作られる「仲間」に入って行くための練習にもなります。
自閉症スペクトラムの1つ、アスペルガー症候群は、1900年代中ごろにオーストリアで小児科医をしていたハンス・アスペルガー先生の名前から来ています。
現代においてアスペルガーと診断される特性を、世界で初めて詳細に記録、報告したのがアスペルガー先生です。
アスペルガー先生は第一次・二次世界大戦で世界が混沌とする中、そういった特性を持った子たちに対して療育を行っていました。
療育の内容は、当時ではとても先見の明のある内容でした。
それは、身体を沢山動かして遊ぶこと、音楽を楽しむこと、子どもたち一人一人の興味に寄り添って伸ばしてあげることでした。
この療育のスタンスはスパークを含め、現代の療育では主流になりつつありますが、当時ではなかなか思いつかなかった内容でした。
それから数十年、医療現場では自閉症やアスペルガーと呼ばれるような子たちを施設に送り込んで隔離してしまったり、現在では過酷で効果の無いとされている療法を行ってしまいます。
いつの時代も子どもにとっては思いっきり楽しく遊ぶこと、そしてその中で社会性を育み、できることを少しずつ増やしていくことが大切です。
ですが、豊かな遊び場(*)や遊ぶ機会自体が減っていることが現状としてあります。
(*思いっきり体を動かせること、こども同士で自由に遊べることなど)
遊ぶ場はあっても特性のせいでうまく輪に入っていけないこともあります。
スパーク西京極では豊かな遊び場を提供するとともに、療育士がサポートをしながら社会性や運動機能等の発達などを促していきます。
<参考書籍>
自閉症の世界 多様性に満ちた内面の世界 スティーブ・シルバーマン著 正高信男・入口真夕子翻訳 ブルーバックス 2017年
スタジオでの遊び紹介も、もう5回目になりました。
今回はラフタンプレイです。
「ラフタンプレイ」と改めて言うと、多くの方がピンとこないと思います。
簡単に言うと、じゃれつき遊びとか、体遊びの類です。
たとえば
・こちょこちょ こしょばし
・抱っこでぐるぐる回す
・手遊び歌
・ふれあい遊び
などなど、ご家庭でもやったことがあると思います。
ではなぜ療育でラフタンプレイをするかを説明していきます。
まず一つは遊んでいる他者を意識するためです。
「手」や「足」と遊んでいるのではなく、「人」と遊んでいることをしっかり意識してもらうため、何度も何度も繰り返します。
その日すぐに効果が出るわけではありませんが、継続して通所していただいているお子様の中には療育士を意識することが出来るようになってきた方もいます。
発達特性のある子たちの中にはボディーイメージの弱い子たちがいます。
ボディーイメージが弱いと、自分の体がどれくらいの大きさで、どのように動いているかというのが認識しにくいです。
そのため、よく物や人にぶつかりやすいという現象が起こります。
ボディーイメージの形成に必要な感覚は主に3つ。
平衡感覚、固有感覚、触覚です。
ラフタンプレイでは、他者に触れる、触られる、包まれる、ということを通じて触覚に働きかけボディーイメージの形成に寄与しています。
愛情ホルモン、絆ホルモンと呼ばれるオキシトシン。
主にハグをすることで分泌されるということが分かっています。
ラフタンプレイはハグに極めて近い遊びなので、同様の効果を期待しています。
オキシトシンはリラックス、ストレスの緩和、人への共感や信頼感が増すなど、様々な効果があるということが分かってきています。
療育を行う上で、療育士との信頼関係は非常に大切です。
他にも、スパーク西京極では「ストレス無く、リラックスして思いっきり楽しく遊べる!」という気持ちを大切にしています。
これらが整ってからでないと、療育で脳へ良い刺激を入れることはできないと考えています。
そして、スパークでは重要な位置づけにある「他者との共感」にも、オキシトシンは一役買ってくれます。
ラフタンプレイ以外の時にも、何かできた時はハグをしてたくさん褒めます。
この時もオキシトシンの効果、加えてドーパミンの効果が期待できます。
ぜひご家庭でもたくさんハグしてあげて下さい!
スパーク西京極では1時間に3名のお子様まで同時に療育が可能です。
多くの場合は2名が大きな部屋でシェア療育、1名が小さな部屋で個別療育を行います。
お子様一人につき療育士は必ず一人以上担当します。
部屋の間にある扉は、締め切ったり、開けっ放しにしたりします。
開けっ放しにしている時であれば3名、締め切っている時でも2名で遊び場をシェアすることになります。
スパークでは公園のようなイメージで遊び場を提供しています。
子どもそれぞれが療育士と自由に遊ぶ中で別の子の遊びへ興味を持ち、自由に参加していくことが可能です。
実際にそういったシーンも増えてきています。
その時に生まれるやり取りを上手にできなくてもかまいません。
療育士がサポートするので、どんどん関わっていってもらえればと思います。
遊びに加わるだけでなく、おもちゃを取り合うようなシーンも見受けられますが、これは決してネガティブなことではありません。
お子様が他者と関わり、社会性を育むチャンスでもあります。
療育士が一人ずつついていますので、気持ちを代弁したり、味方になったりしてお子様同士の関わり合いをサポートいたします。
その中で少しずつ社会性やセルフコントロールが育まれていきます。
何か遊びをしているときに、別の子がしている遊びに気を取られて注意が逸れてしまうことがあります。
「集中力が切れてしまった」とネガティブに捉えることもできますが、「他者のしていることへ興味を持った」というふうにポジティブに捉えることもできます。
これは社会性を育むうえで重要なことであり、遊び場をシェアするからこそ生まれる現象です。
個別療育でありながらも、その場に別の子も一人か二人いるという環境だからこそできること、生まれる効果があります。
ADHDの子に対する運動の効果が科学的に証明されつつあります。
今回は2019年の現段階で科学的に分かっていることについてまとめられたこちらのレビュー論文の内容を紹介します。
新しい情報は何かと英語で、なかなか得ることが出来ません。
でも、せっかくスパーク西京極のブログを読んでいただいている皆さんには知ってもらいたいなと思ったので、大事になるポイントを日本語で簡単にまとめてご紹介します。
【大まかな内容】
・ADHDの子が運動をするとどんなメリットがあるのか?
・脳が発達するメカニズムは?
・どんな運動をすればいいのか?
・科学的に推奨される運動の内容は?
スタジオでの取り組みを交えながら、ご紹介します。
そもそも特性の有無に関係無く運動をするだけで、生理学的、心理学的、認知神経科学的な好影響がたくさんあります。
・ストレス、不安、うつ状態などネガティブな感情の緩和
・実行機能や記憶力の向上を含む認知機能面に対するポジティブな効果→脳機能へ効果
・一過性の運動では脳波の状態が改善&脳に回る酸素の量が上昇する→脳が覚醒し頭が冴える
・脳由来神経栄養因子:BDNFが大脳皮質や海馬で増加→脳の発達
・灰白質、白質といった脳の神経組織の発達を促進
これら全て科学的に証明が進みつつあります。
もちろん科学は全てを説明しませんし、諸説ある状態は続きますが、運動にこういった効果がある事はほぼ間違いないとされてきています。
ADHD特性を持った子に対する運動効果は、まだ「断言」する域には達していませんが、研究は進み、たくさんのことが分かってきています。
先に紹介した生理学的、心理学的、認知神経科学的な効果はADHDの子たちが持つ特性傾向にも関係しており、好影響を与えます。
特に認知機能の中でも重要な役割を果たす実行機能を運動は改善します。
実行機能は課題を遂行するにあたって思考や行動をコントロールするシステムのことです。
(*注:実行機能にはワーキングメモリ、注意のコントロール、抑制のコントロール、認知のコントロール、認知の柔軟性などが含まれます。私たちは普段何気ない行動でも、こういったことを瞬時に処理して生活しています。ところがADH傾向のある人の場合、これらの機能を使うことが少々苦手であると言われています。)
運動による実行機能の発達と、運動から得られるその他様々なメリットが合わさることで、衝動性、注意欠陥、多動といった特性を自分で調整することに対して効果があると科学的に証明され始めています。
ではどうして運動は効果があるのか。
そして、どれくらい運動すれば良いのでしょうか。
一過性の運動(例えばスパークに1回来る)でも一定の効果が認められています。
特性の有無に関わらず、運動をした後は実行機能を推察するテストの結果が良くなる傾向にあるということが分かっています。
これは一度の運動で脳が劇的に発達したからではなく、先ほど紹介したネガティブな感情の緩和や脳波の状態、脳の酸素状態が良くなること等に由来していると考えられています。
つまり、実行機能はADHの特性と関係していると言われているので、運動をすることで、一時的に特性の自己調整がしやすくなる可能性があります。
確かにスパークで療育をしている最中は問題行動が減ったり、普段できない事ができたりするというシーンを時折見かけます。
ただし、こういった一過性の運動による効果はその時だけのもので、しばらく時間が経てばもとに戻るとされています。
では意味が無いのでは?と思われるかもしれませんが、そうではありません。
この一過性の効果でも、何度も何度も蓄積することで良い影響が期待できます。
その証拠に、継続して長期間運動をした場合の方が、一過性の運動よりも大きな効果が科学的に認められています。
一過性の運動より、長期的に運動を継続した方がADHDの子に対しても、定型発達の子に対しても実行機能や特性に大きな効果が出やすいということが分かっています。
ではどういった運動を継続していけば良いのでしょうか?
一番ではありませんが、最も手ごろで、科学的にも効果が認められているのは有酸素運動です。
まだまだ研究段階ではありますが、様々なことが分かってきています。、
心肺機能の高いADHD児の方が、そうでないADHD児よりも抑制制御機能を測るテストスコアが高いようです。
他にも、被験者数が少ないですが、身体活動量と実行機能のテスト結果に相関関係があるというデータもあります。
有酸素運動が良い!!と言っても無理にマラソンなどをさせる必要はありません。
たくさん走り回れるような遊び、
登山や川など自然と心肺機能を鍛えることができる遊び、
できるだけ楽しく息が弾むような遊びに連れ出してあげることが大切です。
それで有酸素運動になります。
運動の強度(激しさ)は軽く息が弾む程度で構いません。
アスリートほど心拍数を高めた過酷な運動じゃなくて大丈夫です。
ウォーキングからジョギング程度の強度で効果は認められています。
スパーク西京極に来て下さった時に療育士たちとキャーキャー言いながら楽しく遊んでいます。
あの時の運動レベルで科学的にもOKなんです。
そして、キャーキャー楽しく遊んでいる、それだけでも脳に大きな効果が期待できると科学的裏付けがされ始めているのです。
有酸素運動以外でも運動の効果は認められています。
最も効果が高いのは、様々な運動に長期間取り組んだ場合です。
「子どもが様々な運動に取り組む」、これぞまさに「自由な遊び」の出番であり、遊びがいかに重要かを物語っています。
特定の運動ばかりを無理矢理させる環境では、様々な運動に触れることはできません。
遊びという自由さがあるからこそ、子ども自身が自ら進んで、楽しく、様々な運動に取り組めるのです。
ちなみに、有酸素運動よりも、コーディネーションを必要とする運動(投げたり蹴ったり登ったり)、スポーツ活動などの方が実行機能向上への効果が大きいという研究もあります。
もちろん、スパーク西京極では遊びを通じてこういったコーディネーションを必要とする運動なども行っています。
最も良くないのは、非活動的な習慣を送っている場合かもしれません。
そもそも定型発達児よりもADHD児の方が身体活動量の推奨レベルを満たしていない可能性が高いようです。
そうなると認知機能や特性による困難さに加えて、肥満や生活習慣病のリスクまで高めてしまいます。
それではこういった運動(遊び)はどれくらい行えばよいのでしょうか。
まず時間ですが、1回あたり10分以下の運動では効果が出にくく、11分以上からがターニングポイントになるようです。
数々の研究をメタ分析した結果では20~30分の運動で効果が出る可能性があるとされています。
ですから療育では最低でも15~20分はたくさん動き回る遊びをしたいなと考えています。
(☆もちろん強制はしませんし、それ以上の時間も大歓迎です。
90分の運動を5週間続けたら大きな効果が出たという研究もあります。)
スパーク西京極での療育は1回あたり60分ですので時間は十分にあります。
脳のコンディションを良くする意味も込めると、できるだけ序盤に走り回ったりできるとベストです。
次に運動(遊び)の強度です。
低~中強度=最大心拍数(脈拍)の40~75%で効果が認められています。
スパーク西京極に来てくれる未就学児(5歳)であれば、1分間に86拍~161拍程度です。
ちょっと走り回ったり、何回もジャンプしたりするだけで十分に到達できる範囲です。
もちろんもっと高い強度でも効果はありますが、継続できなくては意味がありません。
効果が出始める継続期間ですが、こればかりは個人差が最も大きいのではないでしょうか。
それを踏まえた上で言うと、最短でも5~10週間はかかります。
効果の大きさも、大きなものか小さなものか、これも個人差が大きく、断言できるものではありません。
それでも根気よく運動(遊び)はたくさん続けていただきたく思います。
運動をすること、遊ぶことで発達に対してメリットが出る可能性は合っても、デメリットが出る可能性は極めて低いですから。
脳の発達に効果が出る理由についても研究が進んでいます。
まずは1回の運動をすることで脳に起こる現象からご紹介します。
脳波には数種類ありますが、集中や注意に関係するのがβ(ベータ)波、寝る時(不活動時)の脳波がΘ(シータ)波です。
運動をすることで、β派が有意になり、脳が覚醒します。
また、運動をするとリラックスを司るα波も高まると言われています。
すると、脳が覚醒しつつも(起きつつも)、リラックスした状態になります。
それと並行して血流が促進され、脳に行き渡る酸素量も増加します。
注意力やその他の実行機能を最大限に使えるコンディションができあがります。
こういった最高の状態で、遊びの中で脳を最大限使い、自己調整する、できた、という経験の繰り返しが長期的な発達に繋がります。
また、運動をした後には脳由来神経栄養因子:BDNFが脳の皮質、海馬で発現することが分かっています。
BDNFは脳の神経細胞を成長させる役割があります。
運動を継続し、BDNFを繰り返し発現させることで脳の発達が促されると考えられています。
長期的に運動を継続することで脳に起こる変化も科学的に証明が進んでいます。
特に前頭前野、線条体、前頭頭頂皮質、中脳皮質などのADHD児が定型発達児とは異なった発達やネットワークを見せる部位に対して効果があると分かってきました。
そういった部位の神経組織の発達を促すことが運動によって可能であると証明されてきています。
衝動性や多動、注意欠陥といった特性は必ずしも悪いものではなく、それを自分で制御する能力が求められます。
そこに対して運動が効果的であるという科学的な裏付けになります。
今回紹介したレビュー論文はスパーク西京極での取り組みを科学的に裏付けるものになりました。
60分ある療育時間の中で、基本的には動き回るので、有酸素運動の効果が出る条件は満たしています。
他にもボールや大きなおもちゃ、自分や療育士の体を使ってコーディネーションを必要とする運動もたくさん行なっています。
加えて、スパークでは子ども自らが「やりたい!」と思った感情を大切にしています。
どんなに素晴らしい効果が期待される運動でも、「やりたい!」という感情、「楽しい」という感情、リラックスできる環境が無ければ脳に良い刺激は入らないと言われています。
スパーク西京極では、科学的に効果が証明されつつある運動に、感情へのアプローチを組み合わせた療育をしています。
<このブログ記事の参考文献&画像引用>
・Lasse Christiansen et al: Efects of Exercise on Cognitive Performance in Children and Adolescents with ADHD: Potential Mechanisms and Evidence-based Recommendations. J. Clin. Med. 2019, 8, 841.
スパーク西京極ではスタジオに来てもらうとすぐに、「靴下脱ごうか!」とスタッフが声をかけます。
毎度の事なので、お父さんお母さんも「靴下脱ぎや~」と真っ先に子どもに声掛けしていただくことも増えました。
では、なぜ靴下を脱いで裸足で遊ぶのか。
それは子どもの発達に必要な、ちゃんとした理由があります。
ご存知でしょうか?
子どもたちには
「滑ってこけちゃうからね~」と言っていますが、、、。
まぁ、それも理由の一つですが、もっと大切なことがあります。
足の機能と感覚のためです。
人間の骨格は本来、裸足で歩くのに最適な構造をしています。
ところが近年、裸足で活動する機会がめっきり減ってきました。
さらに、最近は靴のソールの機能が上がりすぎて足へのサポートが無駄に手厚くなってきました。
するとどうなるか。
自分の筋肉で足をフルに使うこと、地面の刺激を感じることが減ります。
それが続くと、偏平足やO脚、X脚など足回りのトラブルを生みます。
偏平足は土踏まずがつぶれて足裏が全部地面についている状態です。
衝撃吸収能力が弱くなるので、どたどた歩きが分かりやすい特徴です。
これらはすべて全身の運動機能の低下にも関係します。
とは言っても4歳くらいまではほとんどの子が偏平足です。土踏まずは6歳くらいから完成してきます。焦らずに。
でも使わないと発達していかないので、裸足で遊んでもらいます。
裸足でしっかり踏ん張る、地面をつかむことで足回りの筋肉をしっかりと使います。
靴下を履いていては足の指が自由でないため、この機能を最大限使えません。
地面の凸凹などの状況を感じる触覚が鈍いと足は上手に使えません。
なので、裸足になることでその感覚をしっかりと刺激する目的もあります。
靴下をはいている状態は靴をはいている状態よりは良いですが、布が一枚ある分、感覚は鈍くなります。
足の使い方が下手、感覚が鈍いと、膝、股関節、体幹も上手く使えず姿勢の維持にも影響が出ます。
そして姿勢ができていないのはあらゆる運動機能に影響します。
スタジオでは遊びの中で様々な物を踏んだり登ったりするので、足裏からしっかり刺激を入れ、足の指を自由にした状態で足の機能をいっぱい使ってもらいたいと思います。
週1~3回、時間にして数時間の小さなことかもしれませんが、将来的な偏平足の予防、体幹をうまく使えるようになること、運動機能の向上などにつながればと思います。
わたくしブログ担当、子どもがマットなどによじ登っているとき、足の指がパーッと開いて地面をつかんでいると「よしよし」と心の中で思っています。
スタジオに来て下さる子ども達の中には、よくこける・ぶつかるといった不安を持つ子どもたちがいます。
よくこける・ぶつかる原因として主に考えられているのが、、、、
1.体幹が弱い
2.固有感覚・平衡感覚が弱いことから来るボディーイメージの弱さ
3・注意欠陥
子どもによっては3つとも抱えている場合もあります。
というのも、上記の3つともつながっているので、どれか原因かを明らかにするのはなかなか難しいと思います。
人間の体は1つ1つの機能がばらばらに働いているわけではありません。
全部つながっています。
そこには心や精神、感情と呼ばれる事柄もつながっています。
注意が向いていなければ感覚にスイッチは入りにくいですし、注意や感覚のスイッチが入っていなければ体幹の機能もONになりにくいです。
3つとも十分に機能する能力があっても「気持ち」「感情」が無ければ最大限機能しません。
「心身ともに」とはよく言ったものです。
それでも我々大人としては明確な答えがあったほうが、なんだかほっとするし、取り組みもしやすいですよね。
というわけで、前章で書いたことを前提として、こける原因を考えていきます。
まずは1つ1つの要素のおさらいです。
体幹が弱いと言っても、2種類あります。
①そもそも筋力が低くて、姿勢の変化に耐えれない
②必要に応じて力を入れ、体を安定させるという使い方・機能的な弱さ
平衡感覚は「重力や加速度を感じるセンサー」です。
体の傾き具合やそのスピードを感知し、バランス・姿勢を保つために必要です。
固有感覚は、自分の筋肉の張り具合や骨の位置関係、関節がどれくらい動いているのかなどを感知するシステムです。
固有感覚は平衡感覚と連動し、姿勢を安定させることに貢献しています。
そして平衡感覚、固有感覚、触覚の3つを使って、自分の体のサイズや輪郭、パーソナルスペースを認識する「ボディーイメージ」が形成されます。
よくぶつかるというのはボディーイメージの弱さからくることが考えられています。
しかし、基本的なボディーイメージは6歳ころに形成されるようなので、未就学のお子様では今後の伸びしろを残しています。
注意欠陥は特性としてもよく知られています。
足元や前方に注意が行かず、こけたりぶつかったりしやすくなるとされています。
こちらも最初に述べたことを前提にお読みください。
もし注意欠陥でもないのによくこける、ぶつかるのであれば、体幹や感覚の弱さが考えられます。
もしくは、その活動に興味が無く集中できない=気が入っていないというのもあります。
気分や感情も関係しています。
(余談ですが、、、
本当に体幹が弱い場合もありますが、長時間椅子に座ってられないのは、活動や先生の話が著しくつまらないというのも無きにしも非ずです。なんでも体幹のせいにはできません。大人はつまらない講演会で席を立てます。でも子どもたちは、学校や園ではそうはいきませんから、、、。)
では、体幹や感覚に弱さが無いのにこけたりぶつかったりするのであれば、それは注意を向けるのが苦手なのかもしれません。
その場合どうやって体幹や感覚に弱さが無いのと推察するのか。
それは、子どもが好きな遊び、集中している遊びをしているときの様子を観察してみてください。
その時は咄嗟のバランスも良くとるし、人や物にもぶつかりにくい、こけないのであれば体幹が弱いとは言い難いかもしれません。
楽しくたくさん体を動かして遊んでもらいます。
これに尽きます。
感覚や機能と言うものは、これでもかってくらい何度も何度も使うことで鍛えられます。
大人が思っているよりも、しつこく長くです。
スパークでは感情を育てることを第一に考えています。
「もっとやってみよう」「今これに集中しよう」「できるまで頑張ってみよう」といった感情に療育士がはたらきかけていきます。
感情はすべての根っこです。
遊びの中で感情が高まれば、体の機能や感覚を最大限使う、発達させる土台ができます。
その状態でたくさん一緒に遊びましょう!
感覚や機能を、これでもかってくらい何度も何度も使うコンディションが整います。
一応スパークでは他者と関わる楽しさ、社会性などを発達させることが先です。
その中で今日紹介したような体の機能が発達すれば幸いです。
スタジオでの遊び紹介、今回は「寄り添い」です。
寄り添いは遊びというより、子どもたちとの向き合い方と思って頂いた方が分かりやすいかもしれません。
スタジオにはたくさんの遊び道具、壁のテープアート、ラミネートなど、子どもたちが興味を示すものであふれかえっています。
何かの遊びをしているときでも視界に入ったものに心奪われ、遊びを中断してそちらに行くことも多々あります。
療育士達はそんな子どもたちの「寄り道」を否定するのではなく、認め、一緒に興味を持つことで寄り添っています。
寄り添う中で新しく遊びが展開されていったり、最終的にもとの遊びに戻ってきたりします。
もちろん、寄り添いながらコミュニケーションをとることで他者と関わって遊ぶ楽しみを感じてもらおうという意図もあります。
これは非常に意味のあることです。
スパークでは療育士が子どもの興味を引くように遊びを展開し、誘っていくことをしていますが、そればかりではありません。
子どもが見つけたもの、取り組み始めたものに一緒になって取り組みます。
運動療育なので基本的には体を動かす遊びをしているわけですが、もし子供がおままごとを初めても、まずは寄り添います。
運動でなくても他者と遊ぶ事は前述したとおり非常に意味のあることです。
運動する時間が減る!と悲観されるのではなく、それはそれで大切なんだなと思って頂けると幸いです。
療育士は寄り添って子どもとコミュニケーションを取りながら、次の遊びを展開し、誘うタイミングを待っています。
スタジオでの遊びについての紹介、3回目になりました。
今回は力加減のコントロールを必要とする遊びについてです。
力が強いこと自体は悪いことではありません。
困るのは、力加減を必要に応じてうまく調節できないことにあります。
スタジオに来て下さる子たちの中にも、力のコントロールが苦手な子たちがいます。
何をするときも思いっきり力を入れてしまう。
優しく投げる、蹴るが苦手で、常に全力。
生きていくうえでは思いっきり力を込めるだけではなく、そーっと力を入れたり、優しく触ったり、弱い力で投げたり、置いたり、軽くやっておく、肩の力を抜いてリラックスして取り組むなど、場面や使う物に応じて力加減を調整する必要があります。
スパークでは強制的に何かをさせることはありません。
遊びに対して「やりたい!」と思って初めて遊びが成立します。
<力加減のコントロールにつながっている遊びの例>
・的を狙ってボールや物を投げる
→思いっきり投げるだけでは当たらない、入らない
・強弱をつけてボールを蹴る、投げる、転がすなど
→強く蹴ったり、優しく蹴ったり 強弱の中で力加減を知る
・不安定な場所を渡る
→全力で走るだけでは落ちてしまうので気を付けながらそーっと渡る
・ごっこ遊び・見立て遊びの中で
→ごっこ遊び・見立て遊びの中では様々なシーンが現れます。
音を立てないようそーっと相手に近づくこともあれば、思いっきり大きな音でビックリさせることもあったり。
スタジオでは療育士がお子様につきながら適宜声をかけながら力のコントロールを促しています。
「そーっとだよ」「つよく!」と言ったり、声のトーンや擬音語で表現したり。
子ども一人一人が興味を持った遊びの中で、力のコントロールが身に付くよう遊びを展開しています。
その中で療育士・親御さんは子どもに共感し、褒めることで「できた!もっとやりたい!」という気持ちを引出します。
これは心理学的には「正の強化」と言います。
脳科学的にはドーパミンという快感情を引き起こすホルモンの分泌を高めることにつながり、脳の発達に貢献します。
*「正の強化」=何か(ご褒美)を与えて行動をもっとやりたいと思わせること。できたらお菓子をあげるなどがこれにあたる。
スパークでは人と人との関わり合いを大切にしているので、共感すること、褒めること、認められることなど、人間関係から生まれる喜びが行動を促進するきっかけになります。
さらに、「できた!もっとやりたい!」という気持ちは自己肯定感を高めていき、さらなるチャレンジを促します。
スパークでは力のコントロールを身に付ける遊びをする中で、人と関わる楽しさを知ることや自己肯定感を高めること、脳の活動を促すことなど、様々な面からアプローチしていくことで、子どもたちの発達に働きかけています。
スパークでおこなっている療育は「豊かな遊び場づくり」です。
遊びこそが子どもにとって最高の学習ツールだったということが科学的に証明されてきているようです。
これは療育にも通じることであり、スタジオで行っていることの科学的裏付けにもなります。
詳しい記事があるので、紹介しておきます。下記URLからどうぞ!
科学的に正しい子どもの教育――最高の学習ツールは〇〇〇だった! こどもまなびラボ
https://kodomo-manabi-labo.net/big-date